第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
様子窺いの為に言った言葉だった。
最短で明日。
そう判断したからだ。
「…明日、」
「サボる予定がねぇってんなら、
放課後だってあるだろ?忙しいか」
「明日は美術部の活動があるよ、」
「美術室でなくても絵は描けるんだよ」
そう言ってやると、
パァっと瞳を輝かせてから…
ハッとしたように真顔に戻る。
…その顔がひどく可愛くて。
「ホントなら、今日描かせてやりてぇけど、
…ごめんな、ちょっとムリみてぇだ」
睦のしたい事、
全部すぐに叶えてやりてぇと思うのに
うまく行かない自分に嫌気がさした。
「ううん、いい。ありがとう
明日の楽しみが出来た。
それまでオリコウサンに、
何描くか考えてるね」
「…あぁ、そうしてくれ」
にこりと笑う睦。
笑っちゃうんだ、結局。
せっかくさっき
真顔に戻したところだったのに。
きっとこれが、本当の睦なんだろうな。
それを隠さなくちゃならねぇ何があったのか。
…可愛い顔して笑うのに、
それを押し込めて澄ましているなんて
もったいないような気がしてならないが…
「なぁ、1個訊いていいか。
答えたくなきゃそれでもいいから」
「うん…」
睦は神妙な面持ち。
そんな、身構えちまうような言い方したかな…
「何で授業サボる必要がある?」
そこは、訊いてみてもいいような気がした。
特に隠している様子もなかったからだ。
さっき美術室で逃げかけたのも、
サボりがバレるからではなく
そこに苦手な俺がいたからで…
なら別に
理由を求めたっていいだろう。
サボった事を悪いと思っていないのならば。
「私、たまに教室にいられなくなるんだ。
ちょくちょく居なくなるの、知ってたでしょ?」
「あー…まぁ、」
そりゃ同じ教室にいて、
気づかねぇワケがねぇ。
他のヤツらも気づいちゃいたが
睦にそこまで突っ込める程の友人が
居なかっただけの話。
「あそこにいると息ができなくなる。
もともと、人が集まる場所が苦手なんだ。
ずるい言い方すれば、心の病気ってコト」
キャンバスを胸に抱えて
俺の横を歩く睦は
こっちが拍子抜けするほど
あっさりと答えをくれた。