第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
次の約束を取り付けておきたい。
せっかく顔を覗かせたチャンスを
手放したくはない。
必死だと思われようが…
だれに笑われようが構わないのだ。
この機会を逃したら終わる。
『次』を失ってしまう。
そんなの嫌だ。
耐えられない。
「いつでもってことないでしょ?
「いや、…櫻井に合わせる」
睦、と呼ぶべきだったのに、
それすら出来ねぇとか情けねぇ。
こんなの勢いだろうが。
「じゃあ今から」
「おぅ、今……いま⁉︎」
何を言い出すんだこいつは。
次の約束どころか、今日なのかよ。
「うん。今なら時間あるし。
明日はサボる予定ないし」
口をへの字にして、
目玉をキョロキョロさせる睦。
そんな可愛い顔をしながら
何という暴挙に出るんだ。
どう考えても今日の今日じゃねぇだろ…
「いや、あのな…」
「学校戻ろ」
俺の狼狽えは無視。
睦は学校の方角を指差した。
はぁ…
「今から戻っても、すぐに施錠の時間になる。
まだ明るいが、もう6時近いんだぜ?」
「あ、…そっか」
あからさまに肩を落とす睦。
なぁなぁ、それはさ、わざと?
すっげぇ可哀想に見えちまうだろ。
わざとなの?
素でやってんだとしたら、お前やべぇよ。
「今日は帰って、構想を練るんだよ」
「構想…?」
睦は顔を上げこちらをチラッと見る。
少しだけ希望を持ったようだ。
あぁ、よかった…
「そう、そのキャンバスに何をどう描くか。
イメージしとくんだよ。それだって
描くのと同じくらい大切な事だからな」
「そっか…。うん、わかった」
睦はキャンバスを両手でかざし、
にっこりと笑った。
ホントに、描きたいと思ってるんだな…
これは俺も、生半可な気持ちじゃいられねぇ。
「じゃ明日に、しよっか」
ほんとなら今日描かせてやりたい所だが
何しろ場所がねぇ。
俺んち貸してやってもいいけど
さすがにそれは…