第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
なんつぅトンチンカンな事を言うヤツだ。
本気でそう思った。
だって、おかしいだろ。
貧乏って…
お前のオサイフ事情なんか知らねぇけども
何かを奢られたときに、
『もしかして私、貧乏だとおもわれてる?』
って…そんなこと思うか?
客足の途絶えることのない小さな店。
ただ氷と混ぜたフルーツを搾るだけだというのに
まぁ大盛況だ。
だがやっぱりおいしくて、
連れてきた睦も感動していた。
……
一緒に過ごしたのはほんの短い時間だが、
何だか、雰囲気が全然違って見えた。
教室にいる時の睦は
もっと物静かでまるで眠っているかのような
おとなしい存在だった。
決まった友人もおらず、
自分の席で読書をしている。
クラスメイトも、
きっとそんなイメージを持っているだろう。
そして、
美術室で会った時。
あの時は俺の様子を探るかのような…
パキッと線引きしなければいられないくらいの
はっきりした性格をしていると思った。
なのに、今のこいつはどうだろう。
他のヤツらと何ら変わらない、
この砕けた態度。
気さくに話しかけてくるし、
元気に返事は寄越すし
嫌なことがあれば全力で文句を言い、
珍しいものを見ると目を輝かせる。
…すっげぇ素直じゃね?
別人みたいだ。
なのに、これがしっくり来るから不思議。
普通に仲良くできてる自分にも驚きだが
そんな俺について来られる睦にも
正直驚いていた。
さっき睦の手首を掴んだ時、
てっきり即振り払われるかと思っていた。
なのに、少し逆らってみたものの、
俺がまだだと言ったら
結局そのままいさせていたし
こいつのダメの境界線がよくわからなかった。
どっちが装っている睦で、
どっちがホントの睦なのか。
何のために、そんな事をしていたのか。
それと、
——私に心なんかあっちゃダメなんだった。
あの言葉はどういう意味だったのか。
間違いなく、自分の心を押さえつけている。
それは、何故か…。