第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
それにしても、
仲良くしてどうするって…
そんなこと訊くか?
アレやコレやさせてもらえるなら
どうにでもしますけど。
「好きだったら仲良くなりてぇモンだろ?」
「……………………そっか」
ものっすごく時間かかったな。
「よかった。私なんかしちゃったのかなって
ずっと思ってたんだ」
「悪ィ、余計な心配させたな」
「ううん、いいの。誤解だったなら、
…よかった」
「そんなに気にしてたのか?」
「してたよ。私、あんまり周りが見えなくて
嫌な思いをさせちゃう事があるからさ。
もしかしたら今回もまたやっちゃったかなって」
少し淋しそうに、えへへと笑う。
…そんな顔されると
どうにかしてやりたくなるじゃねぇか。
「そんなん、誰にだってある事だ。
気にする事ねぇよ」
「でも…あんなに睨まれたらさ、……」
「それは悪かったよ、マジで。
そんなつもりはなかったんだが…」
…不思議な感覚だ。
こんなふうに、
他愛もない会話ができているなんて。
不死川以外のヤツとは
話さないと思っていた。
もちろん、無視してるワケじゃねぇけども。
日常会話でなく、
しなくてもいいような四方山話。
それを、俺としている不思議。
話してみりゃあ、
柔らかい物腰とは裏腹に
なかなかのお堅い人物だった。
感情の表現が柔らかでない。
黒と白、
1と100。
グレーがなければ
50もない。
微妙に量り切れない99もないのだ。
それは、感情の欠如という事に
なり得るのではないだろうか…
こいつが今までどうやって生きてきて
何を感じていたのかなんて
まったくわからねぇ。
でも、だからこそ、
俺が助けてやれたらって、…
そんなふうに思うのはおれの驕りだろうか。
「ねぇ、ひとつだけ、お願いきいてくれる?」
睦の不安そうな声が
シンとした美術室に響いた。
…俺といるのに、そんなに淋しそうにすんなよ。
笑っていてほしい。
笑わせてやりたいって、
そんな欲が後から後から湧いてくるんだ。
「ひとつと言わず、たくさんどうぞ」
「え…」
睦は驚いてから、
「…ふふ、ありがとう…」
フッと表情を崩した。