第44章 .☆.｡.:.夏色.。.:*・°☆.

ていうか、笑った、ってなんだ…
同じこと考えてんじゃねぇよ。

「私の事、嫌いじゃなかったの？」

「お前…すげぇこと平気で訊くんだな」

「えぇ？」

「いや、いい…。それと、嫌いじゃねぇよ」

「じゃあ好きなの？」

「はぁ⁉︎」

あまりの事に、俺は筆を取り落としそうになる。

いやいやいや、落ち着け俺。
ヘンな意味じゃねぇって。

「嫌いじゃないなら、好きなの？」

「待てよ、どっちか？どっちかしかねぇの？」

「なんで？」

俺はキャンバスに向かわせていた身体を
くるっと睦の方へと向けた。

…変わったヤツだなぁ。

「グラデーションって知ってるか？」

「知ってる」

「ひとつの色が、
次の色へしなやかに移ってるだろ？」

「うん」

頷く仕種をしながら
睦は興味深そうに
耳を傾けている。

それは小さな子どものようにも見えて
教師にでもなった気分だ。

「気持ちってのは、
それみてぇに滑らかな時があるんだよ。
まぁ、そればっかじゃねぇけど…
でも俺の、櫻井への気持ちは
パキッとはしてねぇわけ。
グラデーションみてぇな、
柔らかいモンなのよ」

「…好きじゃないってこと？」

「いや…。悪ィ、好きだ」

あ……

「なぁ！ンな事よりも！」

何を勢いで曝してんの？

ダメだ、こいつ相手だと
自分がおかしくなる。

「何で俺がお前を嫌いなんだ」

話題を変えようと焦った俺は
さっきの誤解のワケを尋ねた。

「だって、いっつも私のこと睨んでるから」

「え、睨んでねぇよ」

「…睨んでるよ」

「睨んでねぇって…」

……待てよ？

「睨んで、たかも」

「うん、すっごくこわーい顔だよ」

「だってほら、
お前が不死川と超仲良しだから
俺も仲良くしてくれねぇかなーって」

本音を冗談に織り交ぜて
ふざけたつもりだった。
だから、ふざけて返されると思っていたのに

「え…そうなの？
私と仲良くしてどうするの？」

ものすごく真面目な言葉が返ってくる…