第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
それにしても、気がつけば毎日だ。
あのこわーい目をされるのは…。
私、何かしたかなって。
何かしたもなにも、
同じクラスになってもう
3ヶ月とちょっと経つけれど
ほとんど関わった事もないのに。
割と明るくて愛想のいい人だとは思うんだ。
クラスメイトとして
何度か話した事はあるけど、
その時は気さくな印象を受けた。
でも。
殺気にも似たものを感じて振り向くと、
その人が怖い顔でこちらを見ているのだ。
…はっきり言って、
こわい。
若しくは、居心地が悪い…
だって用もないのにこちらを見ていて、
しかも常に怖い顔…
あの綺麗な顔で睨まれると
氷で胸をひと突きされたかのようになる。
なんなの一体。
だけど他の人とは
優しく楽しく話しているっていう事は
…やっぱり私のこと嫌いなのかな。
私は、ひとり、廊下を歩いていた。
ゆっくりと階段を登る。
タンタンと自分の足音だけが、
吹き抜けになっているそこに響き渡った。
他の生徒たちは
みんな教室の中に収まった。
授業の始まりを知らせるチャイムと共に。
見上げると、高い窓から白い日差し。
あぁ…もう、夏なんだなぁ…
週に1度この時間のみ、
美術の授業がない事を私は知っていた。
目指すは美術室。
あそこからの景色が好きだ。
広く見渡せる街並み。
この時季は日差しが強いから
室内とのコントラストが美しい。
真っ暗にも見える手前の景色と、
ハレーションを起こす程の眼下の景色。
何でそんなものが好きなのか、
自分でもよくわからないけれど
どうしても見たくなる。
それを求めて、私は階段を上がり切った。
特別教室しかないこの階は
ひどく静か。
美術室の向こう奥にある
第3理科室は使っているようで
少しざわついている。
でも1番離れているし、
気付かれはしないだろう…
開け放った窓から
聴いたことのある歌が流れて来た。
校内の合唱コンクールで歌われる課題曲。
2年生かなぁ。
開け放たれていた美術室の引き戸。
そこをくぐろうとして、
先客がいる事に気が付いた。