第43章 無償の愛
まさか自分がそんな事を言う日が来ようとは。
しかし恥ずかしかろうが
そんなつもりはなかろうが
言ってしまった言葉は引っ込められない。
だけど他の人ならまだしも、
宇髄さんに対して言い訳なんか
するのもおかしいような気がして、
私は敢えて何も言わなかった。
そんな私の様子を見て
宇髄さんは優しく微笑み、
「じゃ味見と言わず、食ってくれるか?」
そう言いながら
お互いの口唇が触れる寸前で止められる。
もどかしい距離。
この人は、耐えられるんだよな…
むしろ耐えられないのは私の方なのだ。
どっちつかずなのは苦手。
離れるか、くっつくかどっちかがいい。
この焦らされるような時間は
もうたまらなくなるんだ。
しかもこの人は、
私のそういう所を知り尽くしている。
だから全て、計算尽く。
悔しいような…
宇髄さんならいいような。
「お腹…いっぱい…」
「またまた…遠慮なさらず」
「近いです…」
「目の前にチラつかせてんの」
「………エサ?」
「ぷ…俺様が?贅沢なエサだなぁ…?」
「ふふ……ほんと…」
「腹も空いてくるだろ?」
「んー…そういう事にしときます」
さっきまでの、震えが来る程の緊張も
笑いを交えた会話のおかげで和らいで行った。
「じゃあ存分に…」
あとちょっとで触れそうだった唇。
宇髄さんはそれを押し付けた。
奪われた呼吸は
あっという間に私の理性まで失くしにかかる。
味見、とかエサ、とか…
そんな可愛らしいものでは収まらない。
脳内を揺さぶられるような激しい口づけ。
私の思考はついて行けずに、
全てを放棄してしまいそうになった。
彼の頭に手を回し、
後ろ髪をくしゃりと握って耐える。
どこかに力を入れていなければ
堕ちてしまいそうだった。
「…っ、ふ、んん…」
舌を絡め取られ、咥内に迎え入れられる。
先を優しく吸われながら愛撫されると
はしたなくこちらからも
それを返してしまい…
明るいうちからこんな口づけをしていると
ひどくイケナイ事をしているみたい…
少し不安になって顎を引く。
夢中になりかけていた私たちはふと我に返り
お互いを凝視め合った。