第43章 無償の愛
そんな事より、何だって?
お団子…?
「お団子と私を比べないで下さいよ…っ」
「あぁ…例えが悪かったか。
睦の香りが1番好きだ、
って言ったらいいか?」
「いやぁ…っそこで喋らないで、
くすぐっ、たい…!」
引き寄せられる力に逆らって
彼の肩を押し遣りながら背を反らすも
効果なんかほぼ期待できない。
いつもの事ながらこの歴然とした力の差よ…
「なぁこれ何の香り?」
「ね、やめて、ってば…」
くんくんと鼻をきかせ擦り寄る彼。
離れる気がなければ、
離れさせる事も出来ない私は
もう半分諦めの境地だった。
「くすぐったいのわかってるくせに!」
「あぁ、わかってるよ」
「なら、」
「やめてやーんね」
そういって更に強く擦り付け……
あれ、でもこの方がくすぐったくないかも。
緩い方がくすぐったいや。
それを気取られると厄介だ。
故におとなしくしていたというのに、
「……」
鋭い宇髄さんは、
私が平気そうにしている事に
まんまと気づいてしまったらしく。
さっきまでの、
優しい触れ合わせ方に戻した…
途端にゾワリと背筋が震える。
「…っ、やめ…」
「なぁ睦、」
私の必死の訴えを
理解しているのかいないのか
宇髄さんはしらんぷりで私を呼ぶ。
「なん、ですか…っ」
「俺の味見は?」
「は……はい…?」
長い指先が襟元を避け、
首の付け根にまで唇を落とした。
「っちょっと!今そんな…」
おかしな想像をしてしまい、
でもきっとそれは正解で…
それ以上コトを進ませまいと
グッと力を入れて彼の腕から抜け出そうと
もがいていると、
そんな私の姿がお気に召したのか
彼は小さく笑ってみせる。
「団子の味見は済んだろ?
だから次は、俺の味見…」
うっとりとして、
とんでもない台詞を口にした彼……
「…いえ…宇髄さんの味は、もう知ってます…」
それにつられてしまったのか、
私が口にしたのもとんでもない言葉だった…
「…お前…言うようになったな」
驚きと喜びを混ぜくったような表情…
それは、私も同感です…