第43章 無償の愛
私も大概、ひねくれているな…。
「へぇ…俺のせいか」
なのに彼は、何故か嬉しそうに笑った。
「俺が許すから、ねぇ…。
志乃さんより俺の影響力の方が大?」
「その言い方は、ちょっと違うような…」
少し調子に乗ったような物言いが怖い。
こうなった時の彼は
何を言い出すかわからないからだ。
「でもそういう事だろ?
俺の前では、良くも悪くも変われるって事だ」
「…そうでしょうか、」
わざとはぐらかそうとするのに、
「親の言いつけも、俺には無効ってワケ」
宇髄さんの喜びは増していく一方だった。
「おかしいです、
そこは喜ぶ所じゃありませんよね。
叱るべき所だと思うんですけど」
「え?俺に叱ってもらいたいって?」
…絶対に意味を取り違えている。
「違う!」
おばちゃんの教えに背いている私を喜んでいる。
その原因が自分だからだ。
とにかく自分が理由で私が変化する事を
極端に喜ぶ節がある…
喜ばせるつもりはないけれど、
私は私で、その自覚があるから困ったものだ。
相手が宇髄さんならいいかって、
つい心が緩んでしまうところがあるから。
もしかして、
おばちゃんに勝った、つもり、だとか…?
まさかね…
そこまで単純じゃないよね…
「睦にそう言われちゃしょうがねぇな」
でもどうだろう、この浮かれ方…。
呆れを通り越して可愛く思えてくる。
「言った覚えはありません!」
でもそれとこれとは別の話だ。
いつも通り想いが溢れているのか
めちゃくちゃに強い力で抱きしめられ
…ヘタすれば締め上げて潰されてしまいそう。
「苦しい、よ…!」
息をするのもままならない程の力。
敵わない事がわかっていながらも
抵抗せずにはいられなかった。
「あー、睦いい香りだな…」
顎の付け根に鼻先をうずめ、
スンっと匂いを嗅ぐ…
「やめて…!」
くすぐったいし恥ずかしい!
「さっきの団子なんかより
こっちのが全然甘い」
多少、腕の力を緩めたのは
私を逃がすためではなく、
泳がせるため…
逃げそうで逃げられない私を
楽しんでいるのだ。
なんていう悪趣味…!