第43章 無償の愛
「それあと全部睦のな」
そう言ってまた、ごくごくお茶を飲み出す。
よっぽど甘かったみたい…
私は全然平気なんだけどな。
「わーい」
お皿の上のお団子はあと3つ。
全部私のだと思うと自然と笑顔になる。
「…そんな事を喜ぶんだもんなぁ…」
独り言みたいな呟きが上から降って来て
私は凝視めていたお団子から目を上げた。
…そんな事?
「いやいや、悪ィ意味じゃなくて、」
虚空を見つめたまま、
しかめっ面をしていた私を見て
宇髄さんは慌てて言い訳を始める。
「そうやって小さな事でも喜んでくれると
してやり甲斐があるなって思ったんだよ」
別に怒ったわけじゃないのだが、
多分そう勘違いした宇髄さんは
私の機嫌を直そうというのか、
頭を抱きしめて頬擦りをする。
…何をされると私が喜ぶのかが
全部バレているようで気恥ずかしいな。
「小さな事、ですかね…?」
「ん?」
「小さな事でもありませんよ?
私のために須磨さんが用意して下さって、
それを宇髄さんと一緒に食べられるのって
割と贅沢だと思うんですけど…」
「そんなふうに思えるのっていいな…
そういうとこ、ほんとに、……」
宇髄さんが妙な所で言葉を切った。
あれっと思って振り向くと、
今度は宇髄さんが不機嫌そう…?
「…お前さ、俺が喋ってんのよ今」
「はい…聞いてます」
「団子に夢中じゃん」
「えぇッ…そ、そんな事ありません」
人を食い意地はってるみたいに…!
「俺がわからねぇとでも?」
意地悪く目を細める宇髄さん…
「…ちょっとはね…
甘くていい香りだなぁとか思いましたけど…。
それでもちゃんと聞いてましたよ」
「話してる人の目を見ろって、
志乃さんならきっと教えたはずだぞ」
「お、おばちゃんの事を持ち出さないで!」
確かに全くその通りです。
さっきの、食事中の事と合わせて
耳にタコが出来るくらい
しつこく言われ続けていた事だ。
挨拶と、人の目を見ること…
「ガキの頃からの教えじゃねぇのー?」
「おばちゃんが許さなくても
宇髄さんが許すから
私こんなになっちゃったんだよ!」
だけど、そんな意地悪を言うのなら
全部宇髄さんのせいにしてしまえ。