第43章 無償の愛
「なぁ、アレはなんだ?」
宇髄さんの膝の上に乗せられて早1時間…
昼寝をするなんて言いながら
楽しくて、結局お話しを終われずにいた。
ずっと私を乗せたままで
足、痺れたりしないのかなと
余計なことを考えていた時の事だ。
宇髄さんはテーブルの上のお皿に
ちょこんと乗ったお団子を指差し訊いた。
お茶菓子として出した白いお団子。
うっすらと、琥珀色が透けて見えている。
「みたらし団子なんですって」
「ソレが?」
「はい、コレが。
中にタレが入ってるんです。
だからこうやって、手で待てると…」
私は真っ白に見えるお団子をつまんで見せた。
指先を汚す事なくつまみ上げられたお団子を
物珍しそうに凝視めた宇髄さんは
「だから串に刺さってねぇのか」
感心したようにため息をつく。
そうです。
刺さってたら、中に入っているタレが
流れ出てしまうからね…
「すごいでしょ?
さっき須磨さんが下さったんです」
「へぇ…。なんだかなぁ、
鼻がきくっつぅかなんていうか…」
「珍しいものを見つけるの、上手ですよね。
おひとついかがですか?」
「そうだな…」
ほんの興味本意で
宇髄さんは、あ、と口を開けた。
……食べさせろと。
人に何かを食べさせるのは
あんまり慣れてない。
でもそのままジッと待っているので
私は仕方なく、
持ちやすさを証明するために
つまみ上げていたひと粒を
その口元に持っていった。
宇髄さんは私の様子をジィっと凝視めながら
パクッと頬張った。
…緊張している事に気づいているに違いない。
それを誤魔化したくて
私は自分でもひとつ食べてみた。
「……おいしい…!」
甘い蜜の香りが鼻に抜けて幸せの味がする。
弾力も私好み…
「…睦が好きそうだなー…」
もっちもっちと咀嚼しながら
宇髄さんはまだ私を見下ろしていた。
『口に物が入っている時に喋らない』
おじちゃんとおばちゃんに
口をすっぱくして言われてきた言葉だ。
故に、うんうんと頷くだけ。
宇髄さんは早くも嚥下したようで
少し冷めてしまったお茶をひと口飲んだ。