第43章 無償の愛
「そんな…。ごめんなさい、
宇髄さんは私のために…」
「そう、お前の為だと思ってた。
つらいだろうから、少しでも楽しめる事をと
そう思ったんだ。でも、
そんなん楽しめるワケがねぇよな」
「……」
「そうやって、ちゃんと本心を言えばいい。
お前は間違ってねぇよ。
おかげで俺は、睦が本当にして欲しい事をしてやれるだろ?」
だから言ってみなというフリのつもりだった。
それは睦にも正しく伝わっていた。
ただ、…。
「…私ここに居たいです」
「ここに居たい?」
「はい。宇髄さんとここに居たいです」
帰って来たのはなんとも慎ましい要望。
「…そんな事でいいのか。
どっか、行ってみたいとこねぇの?」
今なら連れてってやれるってのに。
「行ってみたい所はたくさんあります。
でも今は行きたくありません…」
せっかくの俺の好意を無下に…
なんて考えているに違いない。
俺の目を見られなくなった睦は
少し顔を背けて小さな声で言った。
俺にとっては、
お前の言う事が全てだというのに。
「いいな…。
じゃ今日は好きなように過ごそう。
何もしねぇ日だ」
「なにも…?」
「そう、したい事だけをする日」
睦の瞳がきらきらと輝いた。
今にも踊り出してしまいそうだな。
「楽しそうだろ?」
「うん…!」
「あ、もうひとつ、」
「はい」
待ったをかけられ、
睦は佇まいを直す。
「睦んちの事、
俺の知り合いに話を通してある。
ちゃんと元通りにするから心配すんなよ?」
「いつのまに…?」
「睦の事だ。ちゃんとしなくちゃな」
「…ありがとうございます、」
安心と、喜びの混ざった笑顔。
それを見られただけで充分。
そんな顔をしてくれるのなら
俺はなんだってするよ。
指先で目尻を拭いながら
「幸せ過ぎて、気が緩んじゃいました」
照れたように笑う。
1番不安だった事だよな。
そんなのわかってたよ。