第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
「大丈夫だよ、」
何も知らねぇ状態の睦にとって
この状況はなにひとつ大丈夫ではない。
めちゃくちゃな事を言っていると
自分でもわかっていた。
震える身体を必死に抑えようとする睦は
「…うん、」
何とか自分を納得させようと
俺の言葉に同意する。
その姿が可哀想で可愛くて…
ものすごく悪い事をしているような気になった。
「悪ィ…。しばらく、このままいような」
焦ってここを去るより、
まず睦を落ち着かせる事だよな。
小さな震えは、
俺の腕に包まれて大きく揺れ、
その後すぐに安心したのか
全身が弛緩していった。
少し落ち着いたように感じチラリと覗くと
ふと俺の視線に気づき凝視め返し、
「……隠し事してる」
眉根をほんの少しだけ寄せる。
「え″」
何だって?
「してるんだ…」
俺の反応を見て確信を得た睦は
力無く言って項垂れた。
「わかった!宇髄さんが壊したんですね⁉︎」
ハッと閃いたように顔を上げ
当たらずも遠からず…な事を言う。
「俺じゃねぇー、と思うんだけど」
「思うってなんですか?
ホントの事は?私にはいっつも言わせるくせに」
「ホントの事だ。俺じゃねぇ」
きっかけは俺かもしれねぇけどな…
あそこをぶち破ったのは俺と違う。
「……宇髄さんとこには行かない…」
「なんで⁉︎」
「行かない…」
「…俺ウソ言ってねぇよ?」
「わかった…」
そう言いながらも腑に落ちなさそうに
視線を落とし、
するっと俺の腕をすり抜けた。
「睦…?」
「私なんか悪い事しちゃった気がする…」
「……は?」
「思い出せないけど」
「そんな事してねぇよ、おいどこ行く気だ」
「わかりません。
でも宇髄さんの顔は見たくありません」
睦は家の敷地を出て山の方へと向かう。
「見たくないだと⁉︎」
「あ、違う、見ていられません」
「いや、同じだわ」
「ちょっと放っといて下さい…」
「誰が放っとくか、戻れ」
背を向けた睦の腕を取ろうとするも
見事によけられてしまう。