第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
相手も居ねぇのに
俺1人でやりましたなんて言えねぇし。
「……」
睦はそこを凝視めたまま絶句。
目も離せなきゃ言葉も出ねぇ。
そりゃ自分ちが破壊されてりゃ
こうもなるよな。
「睦…!今から俺んとこ来い!」
俺は先手を打つ。
何か訊かれたり泣かれたりする前に
こちらから打開策をを提示した。
すると、ぎしぎしと
ぎこちなくこちらに向き直った睦が
「…何が、あったんですか…?」
困惑の色を強めて俺に問う。
だから、訊くなって…
俺は全部知ってるんだから
答えてやりたくなっちまうだろうが。
お前にはウソなんかつきたくねぇが、
…乗ってやるより仕方ねぇ。
「何があったかなんてわからねぇ。
けど、これは只事じゃねぇし…
もしかしたら家ん中に
何かが潜んでるかもしれねぇだろ?」
苦しい言い訳だ。
だが混乱を極めている睦には
そんなものを感じ取る余裕などない筈。
「えッ⁉︎や、だ…」
パッと家の方を振り返って、
背筋を震わせる睦は
思った通り、俺の言葉を鵜呑みにしてくれる。
…ごめんな睦。
「家は後で俺が探りに戻る。
戸は職人に直させるから…
今はこのまま俺のとこに行こうな」
「でも…」
睦はパニックを起こしていて
冷静な判断をする事は出来ないようだった。
「睦、なぁ、こっち向いてみな」
「えぇ…?なん…あ、でも…
後でなんて…宇髄さんが危険…」
「こら、」
「だけどこんな…誰が…、
私は何してたの……っ」
俺を放置して狼狽し切っている睦を
落ち着かせる、またはこちらに気を向けさせる為
気を引く程度の軽い口づけを落としてみる。
睦はぱちっと瞬きをしながら
ぴくりと肩を震わせた。
「睦いろいろ不安だろうが、
今はとりあえず行ってもいいか…?」
「……あ、…と、」
見上げた睦は蒼白。
血の気が引いてもう真っ白だ。
俺はもう、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
本当の事を話したいが、
そんな事をすれば
もっと混乱させてしまいかねない。