第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
ちなみに俺は大いに手加減し、
睦は全力だ。
俺が本気出して睦を逃すワケがない。
「山なんかに何の用がある」
「いろいろ考えたい時はあそこに行くんです」
「あそこ⁉︎山に⁉︎危ねぇなぁやめとけよ」
「危ないから宇髄さんは来なくていいですっ」
言いながら突然駆けていく睦。
「っおい‼︎」
思いがけない事態に驚きはしたが
先を行った睦になんか
一瞬で追いつける。
「なめんなよ、俺から逃げられると思ってんの」
走る睦の真横にピッタリつけた。
「思ってません!でも
ほっといてって言ってるんだから
宇髄さんならきっとそうしてくれるんです!」
「あー、俺がね、優しいから」
「そうです!私がして欲しい事は
きっと叶えてくれるからです!」
「可愛い睦の願いなら
なんーでも叶えてやるよ。でもなぁ…」
「う、わあ…っ」
睦の腹を抱えて地面を蹴った。
「ちょっと!ずるいです!」
「そう、ズルいの俺は」
「よくこんな意地悪できますね!」
「出来ますよー」
「うー…意地悪!ばか!
自分勝手だし独りよがり!下ろせー!」
…かなり手ぬるいが、
多分睦が思いつく限りの
あらゆる悪態をつきながら、
俺の腰に強く抱きついて離れられない。
なぜってここが、たかぁい枝の上だからだ。
高い所は嫌いじゃないが怖いという睦。
ここまで高けりゃまぁ動けはしないだろう。
「あーいい景色だなぁ」
朝日が照らし始めた光景は美しく
睦の気を逸らすにはうってつけだ。
「…私なにもしてない?」
涙目でそう訊く睦。
そんなに不安に思ってくれんのか。
「してたら、
俺もっと怒ってるか不機嫌になってるよ」
「…そう、?」
思い切り覗き込み
俺が不機嫌かどうかを確認する。
「睦と追っかけっこしてるよりも
こうしてくっついてる方がいいの俺は」
「うん…」
「ほら、おかげでこんな景色が見られたろ?」
生まれたての朝日が照らす山や河の
なんと美しいこと。
ついでに、
その景色に見入る睦の
なんと眩いこと…
景色に見入るフリをして
俺はいつまでも睦を楽しんでいた。
☆彡