第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
「「どこが⁉︎」」
同時に私に顔を向ける。
だって息ぴったりだよ。
「やめてよね、いくら睦ちゃんでも
言っちゃダメな事くらいあるんだよ?」
…そんな事を言っている余裕なんか
きっとないはずなのに。
「…すきな人の所に、行けるの?」
押し寄せるたくさんの感情。
どれだけ元気な言い争いを聞いたって、
目の前の現実はあまりにも悲しくて。
私が鬼さんへと伸ばした手を、
宇髄さんは許してくれた。
やっぱり仲良しさんだ。
本気で嫌っていないでしょ?
「残念だけど…行けないよ。
…きっともう会えないな」
「そん、な…」
「今まで…
悪い事をしてきた報いを受けなくちゃ」
悪い事…?
そう言われてしまうと…
もう何も言えなくて、
宇髄さんに叱られるとわかっていながら
私は涙を零してしまう。
「いい人だったよ…?」
そんな気休めしか口にできない自分が悔しい。
私を凝視めて、
なんとも言えない表情になる鬼さんは、
身体のあちこちを少しずつ崩れさせて行った。
人間とあまり変わらない容姿。
喋り方も優しくて、
私の事、すきだと言ってくれた。
「人じゃないよ。でも、ありがとう」
喋っている頬も
焼けて形が失くなっていく。
悪夢のようだ。
「宇髄さん…!」
「……」
宇髄さんに助けを求めたって
どうにもならない事はわかっている。
でも、どうにか、…何とかしてほしくて
彼に縋ってしまった私を、
宇髄さんは悲しげに見下ろすだけだった。
あまりにも恐ろしい光景に、
それでも目を離せずにいると
「ごめんね、こんな所見せて…でも大丈夫。
君はすぐに…忘れるからね…?」
私を慰めるような事を言う。
忘れるわけがないよ、こんな事…!
そんな事より、
痛くないの?怖く、ないの…
ごめんなさい、何も…出来ない…
「泣かないで、僕が宇髄に怒られちゃうよ。
…ほんとに君は、あの人そっくりだな…」
独り言のように呟いて、
目の前にいた鬼さんは
日の光に透けて、すべてを散らしてしまった。
最後のひと塵が空気に溶けた瞬間、
私は夢から覚めたように
全ての記憶が飛んでいた…。