第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
「睦、お前までケガするから…!」
睦を抱き寄せる鬼の腕を払い
俺は小さな身体を奪い返した。
その途端、
「い、やぁあ‼︎離して…っ」
俺のことを怯え切った目で見上げ
睦は泣き叫んで逃げようとする.。
「睦…っ」
「やあぁっ宇髄さん…!宇髄さん助けて‼︎」
俺の名を叫びながら助けを求める手が向くのは
…にっくき鬼の方だった。
その鬼はニヤリと嗤い
「ほらね?やっぱり彼女は
僕を取ったでしょ?」
歪んだ台詞を吐き出した。
でも今の俺にはそんな言葉届かねぇ。
「睦…睦‼︎
俺が、わからねぇのか⁉︎」
肩を掴んで軽く揺さぶるも、
「っ‼︎や…」
涙まで浮かべ、ガタガタと震え出す。
「睦…」
だめだ。
今の俺じゃ、怖がらせるだけ、なのか…
パッと手を離してやると
即座に俺から距離を取り、
背後に座り込んでいる
鬼の胸に飛び込んでいった。
その身体を両腕で抱き込んで
鬼は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
…睦が喰われてしまうことよりも
俺から離れてしまったことに
絶望している自分に愕然としていた。
俺は間違っている…
「ごめんな睦…
俺は、お前を守ってやれねぇみてぇだな…」
足元がガラガラと崩れ落ち
闇へと突き落とされた気がしていた。
そのまま黙り込んだ俺に、
鬼の胸の中からふと顔をこちらに向ける…
「………」
何も口にはしないながらも、
睦の目に怯えはなく
何かを見定めるかのように
じぃっと俺を凝視めていた。
「睦…俺にお前を、守らせてくれよ。
俺への愛を…」
誓ってくれたよな…?
頼むから俺の前で、
他の男の腕に抱かれたりしないでほしい。
……でも睦にとっては
あいつが俺で…
俺は俺に見えていないのだ。
睦は、間違えてはいない。