第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
しばらく凝視め合い、
ゆっくりと近づいてくる彼に
口づけの予感がして私はそっと目を閉じ………
ドォンッ‼︎
という、爆発音が小屋の外で轟いた。
不意に明るくなる小屋の中。
暗順応していた目には明るすぎる程の月影。
急に明るくなったという事は…
もしかして周りの木々が
なぎ倒されでもしたのだろうか。
大きな音に耐えきれず
私は両手で耳を塞いだ。
さっきまでの甘い雰囲気ごと吹き飛ばされ
私たちを追いかけていた鬼に
見つかってしまったんだと悟った…。
俺には、睦という人間を察知する機能が備わっているんだと思う。
例えば離れていたとしても、
睦はきっと
こっちの方向にいるんじゃねぇかと
鋭い勘が働くのだ。
距離が狭まれば
今度は勘じゃなく耳が
睦の音を聞き分ける。
そうやって見つけたのが
鬱蒼と茂る木々の隙間に建てられた小屋だった。
中から感じる2つの呼吸。
もうそこにいるのは確実だ。
狭い小屋に2人…
しかも睦の方は俺と一緒だと思って
疑ってはいないだろう。
それを利用してあの鬼は
睦の事を喰らおうと企んでいるのだ。
そんな事だけは絶対ぇにさせねぇ…!
だが、睦がいるあの小屋を
ぶっつぶすわけにもいかねぇ。
逃げてもすぐには隠れられないように、
小屋の周りの邪魔な木々を
木っ端微塵に薙ぎ払った。
高い木に遮られていた月光が
腕を伸ばして辺りを照らす。
俺の繰り出した爆風が
ご丁寧にも小屋の扉を押し開いていた。
中を窺うと、月明かりのおかげで
見たくもねぇ光景が映し出されている。
耳を塞ぎ身を縮める睦を
クソ鬼が守るように抱きしめているではないか。
今すぐにでも切り刻んでやりたいが
睦にまで危険が及ぶ。
2人を引き剥がすより他はなかった。
「睦、来い…!
そいつを始末しなけりゃならねぇ」
俺が呼びかけると
全身をびくつかせて
鬼の胸元によりうずまっていく睦。
その光景に俺の苛立ちは最高潮に達した。