第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
「そんな顔すんなよ、大丈夫。
睦が無事でいることが最優先だ」
「……でも、」
「なんだ?」
つい目を開いてしまいそうになり
いけない、と戒める。
様子を探っていたんだった…。
「なんだか宇髄さん、いつもと違うから…」
「違う?…どこがだ」
「どこ、って言われると…
わからないんですけど」
さっき感じた言葉の違和感は今は無かった。
いつもの口調に戻っていたし、
触れた感じも宇髄さんそのものだ。
「くく…なんだよ、どうしたんだ?
そんな事より
その目を開いて、俺のこと見てくれねぇの?」
…そんな事より……
言葉の端々が、
ほんの少しずつ気にかかりながらも
私は優しい声に誘われるように瞼を開いた。
目が合うとにっこりと甘い笑みを浮かべる。
全身を溶かされてしまいそうな笑顔に
他の全てがどうでもよくなってしまった。
「可愛いな…そんなに、好きなのか…?」
「えぇ……?」
宇髄さんの、泣いてしまいそうな表情…
「ど、したの急に…?やだよ、泣かないで…」
泣いてもいないのに、
そうなってしまう予感がして
私は慰めの意味を込めて
宇髄さんの頬を両手で包んだ。
親指で上下に撫でると
宇髄さんはそこに擦り寄って甘えた…
何だか、いつもと逆転しているみたい。
こんなふうに甘えてくれる事はあんまりなくて
…珍しい宇髄さんの姿に
胸のあたりがソワソワする。
「…睦…俺だけを、見てほしいのに…」
切なげな瞳。
その上目遣いは反則です…!
どうしちゃったの?
ドキドキするんですけど…
「私、…宇髄さんしか、見てません」
あんな台詞を言わせてしまうような…
疑わせる行為はしていないはずだ。
身に覚えがない。
でも宇髄さんは悲しげに目を伏せた。
「違う。そうじゃなくて…」
私の背中をぎゅっと抱きしめる。
「何かしてしまったのなら謝ります。
でも私、ちゃんと宇髄さんの事…好きですよ?」
この人の不安を打ち消したい…
私のせいなんだとしたら余計だ。
「睦…」
私の髪に指先を差し込んで
宇髄さんは様子を窺って来る。