第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
「俺の睦に触んな‼︎」
と、叫んでから、しまったと思った…
睦にとって今の俺は鬼らしい。
それが喚けば怖がるに決まっている。
より強く抱きついて
その胸に顔をうずめる睦は
小さく震え出した。
「あーあ、怖い鬼だねぇ?
僕がちゃんと守ってあげるから大丈夫だよ?」
そうして
ぎゅうっと睦の背中を抱きしめる。
虫唾が走った。
その女は俺のだぞ。
誰のものでもねぇ。
俺の…俺だけのだ。
渡さねぇ
「ちょっとホントに怖いじゃん!
睦ちゃん行くよ?
静かな所へ着いたら
ちゃんと食べてあげるからね」
見なくてもわかる。
自分が今、どんな顔をしているのか。
だけど、どうにかできると思うか?
なにがちゃんと食べてあげるだ!
誰がそんな事させるかっての。
なのに睦と来たら
その鬼を見上げて小さく頷いて見せる始末。
「おい!てめぇの声は
睦にどう届いてんだ!
喰われると聞いて何で恍惚としてんだよ!」
「えー?君、割と野暮だねー。
僕らは今、恋仲なんだよ?
恋人に食べられるって言われたら…
ひとつしかないでしょ?」
恋人を、食う…って…
まさか色事って…?
そういうコトですか?
俺と色事に耽ると思ってあの表情…?
やべえ!
可愛い‼︎
「睦返せ、このクソ鬼が‼︎」
可愛すぎる睦を
今すぐこの手でめちゃくちゃにしたいの俺は!
「こんなに美味しそうなコ、
みすみす返すわけないよ!」
「てめぇが言うと卑猥なんだよ!」
「それは自分でしょー?
欲望剥き出しにしちゃって」
「俺が睦を欲しがって何が悪い!」
「自分ばっかり許容しちゃってズルいの」
俺の脇を抜けるのはムリだと踏んだのか
部屋を横切り玄関へと向かう。
外へ飛び出したのはほぼ同時。
睦を抱えているのを感じさせない程
軽やかに
山の中へと飛び込んで行く背中を追った。
暗いところは慣れている。
山の中なんてお手のものだ。
負ける気がしねぇ。