第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
「ごめんな睦、
戸、壊しちまったな…」
「…宇髄さん…?」
ちょっと疑わしい。
最初に、別人だと思ってしまった事と、
入って来た時の影が違ったのと…
それがひっかかっているのだ。
顔を見るまで、信じられない。
「なんだ?」
優しい声と、頬に触れる大きな手。
それに、そっと触れてみると
優しい温もりを感じて…
次第に風が攫っていく白いモヤ。
すると見えてくる、私の愛する人の姿。
「宇髄さん…!」
もう一方の手も添えて
その手をぎゅっと握る。
「大丈夫なんですか⁉︎
どうしてあんな…」
「ちゃんと直すから許してくれな」
彼はひどい壊れ方をした縁側の方を
顔だけで振り返り頭を掻いた。
「そんな事はいいんです!
ケガはないんですか⁉︎
ガラスとか刺さってたら…」
私は宇髄さんの身体のあちこちを調べた。
「大丈夫だ。何ともねぇから」
「えぇ⁉︎そんなわけないでしょ…?」
「俺を誰だと思ってんの?
そんなヤワじゃねぇよ」
こちらに顔を戻してにっこり笑うと
私を安心させるために
よしよしと頭を撫でてくれる。
この人が大丈夫だって言うのなら、
きっとそうなんだろうと
ホッと息をついた時…
縁側の向こうから飛び込んで来た
もうひとつの影。
私は驚いて宇髄さんにしがみついた。
侵入者は宇髄さんと同じくらいの背丈。
ものすごく恐ろしい目で
宇髄さんを睨みつけていた。
敵意丸出しだ。
しかも…
「宇髄さん…あのひとは…っ」
額から突き出た黒いツノ…
間違いなく、鬼、じゃないだろうか…
「大丈夫だ睦。俺の後ろに隠れてな」
宇髄さんは私を守るように
目の前に立ちはだかった。
私は宇髄さんの背中に隠れて
小さくなるしかなかった…。
色男鬼を追うものの、…
足の速さが自慢なのだろう。
差は縮まるが捕まえるまでには至らず
攻撃を仕掛けるも
ちょこまかと躱しやがって
なかなか当たりゃしねぇ。
民家をぶっ壊すワケには行かず
派手な攻撃を避けていたが
睦の家の周辺はほぼ川と山だ。