第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
首には獣の毛皮を巻き付け
腕には細い金属で出来た腕輪が幾重にも重なり
動くたびにシャラっと小気味の良い音がする。
一見、動きにくそうな高下駄をカランと鳴らし
立ち上がる佇まいが…派手!
敵ながら天晴れ。
…なんて言ってる場合か。
立ち上がったぞ。
しっかりしろ。
向こうの手の内まではわからねぇ、
だから先に攻撃を仕掛けるんだ、隙をつけ!
そう思って両手にもった日輪刀を
ぐっと構えて見せた。
しかし、…
弧を描く薄い唇。
涼やかな目元は俺を見据えたまま。
「君、恋をしているんだね!」
この緊張感の高まっていたハズの場に
およそ似つかわしくない、
なんともとんちんかんな台詞。
しかもなんだか嬉しそう…?
「はぁあ?」
俺も一気に緊張感を失った。
「相手は男の子?女の子?」
終始ニコニコの鬼…
何だコイツ。
この俺様に、刀向けられてんだぞ。
どう考えたって
それをどうにかするのが先だろうよ。
てめぇに向けられた殺気がわからねぇのか。
「答えられないって事は、男の子かな?」
「何でだ!女だわ!」
あ……
俺も何答えてんだ…!
少し膝を曲げて飛びかかる準備をする。
「そっか、女の子なんだね。
僕も女の子の方が好きだなぁ」
駆け出す時のように前傾になり
うんうんと頷いている鬼目掛け斬りかかった。
だがどうやら一筋縄ではいかないらしく
身を翻し優雅とも言える所作で見事に躱される。
「その子っ、可愛い?」
「可愛い、に、決まってんだろ」
刀の先が触れそうになった瞬間、巧みに避け
飛びのいた脚が
その勢いを保って俺の足元を掬う。
「それは、ぜひ…お会いしたいな!」
掬われた俺は後傾した姿勢を使い、
地面に手を突きそのまま脚で蹴り上げる。
ヤツの鳩尾に直撃、
上方へ飛び上がった所へ
体制を整え切っ先を向けるが
ヤツも簡単には諦めない。
「もったい、なくて、会わせらんねぇわ、」
どうやら空中でも関係なく動き回れるらしく
空気を蹴って飛び上がりやがる。
地面半力もなく、俺の日輪刀よりも速く
上に飛びのくとは…
「えーいい、じゃない、ケチ…
って…!君、強いねぇ」
「そりゃどーも」
そう言いながらも
連続で繰り出す攻撃をきれいに躱され
ひどく気に入らなかった。