第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
風の音はもちろん、
さっきから続く金属音が
今度はすぐそばで鳴り響き、
私は布団の中から抜け出した。
不安が募る…
さっき聞こえたのは
宇髄さんだと思うんだ。
多分、間違っていないと思う…
だけど…
ザワ…
と、庭の木々がざわめいた。
さっきまでとは全然違う、湿気を含んだ
肌にまとわりつくような風に変わった気がして
私の胸までがざわついてくる。
普段の私なら、
きっと布団に潜り込んでしまうんだろう。
だけどどうしてか、
今日ばかりはそんな気にはならなくて…
だからと言って、
外の様子を窺いに行く勇気なんて
微塵もないのだけれど…
今宵、俺が出会した鬼と来たら
そりゃあ具合の悪ィ輩で、
今まで相手にして来た中で
最低最悪に相容れない感性の持ち主だった。
…いや、或いは、
似すぎていたのかもしれない。
いやいや、鬼相手に
相容れるやら何やら、あり得ねぇんだけども。
それにしても
俺の神経を見事に逆撫でするヤロウである事は
とりあえず間違いなかった。
日が落ちてから30分ほど経った頃。
俺は虹丸から指定された
少し寂れた町並みを踏査していた。
少し田舎のせいなのか
暗くなると同時に人の姿が消え
俺にとっては都合の良い状況が出来上がった。
ある大きな木の下に差し掛かった時。
強く吹く風に乗って、
微かだが妙な音が聴こえてきた。
——上だ!
咄嗟に目を上向けると、
高い枝先から既に鬼らしきモノが飛び降りる
正にその瞬間だった。
瞬時に日輪刀を抜き地面を蹴る。
落ちて来るまで待ってやる義理はねぇ。
こちらから斬り込んで来るとは思わなかったのか
少しだけ目を見開いた鬼は
日輪刀の切っ先が触れる瞬間、
空中だというのに、ヒラリと身を躱(かわ)し
見事に地面へと着地した。
数秒遅れて降り立った俺をまっすぐに見据え、
しばらく睨みつけていたが、ふと
笑顔を作る…
その時点で、嫌な予感はしたんだ。
左目だけを覆う長い前髪。
額から突き出る歪な角。
クセのある長い赤毛を背に垂らし、
髪と同じ赤を基調とした白と黒の着物は
粋に片肌脱いで、
帯代わりにしているのは
何本もの組紐を
縄程の太さにまでねじり纏めたものだった。