第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
やっぱり雨戸を開けておく事を選んだ。
時折吹く強い風の音と
ガラス戸の隙間から吹き込む冷たい空気に
眠りを妨げられながら、
私は毛布にくるまっていた。
こんな事をしたって
彼が来るという保証はどこにもない。
なのに、そうせずにはいられないんだ。
…困ったものだ。
そうして何度目かの目覚めがやってきた。
浅い眠りが続いたせいか、
私はもうそれ以上眠れなくなった。
まだ真っ暗な景色が、
ガラス戸の向こうに広がっている。
寝転がったまま、ぼんやりとその景色を見ながら
あぁ今日は、
きっともう来てくれないんだなぁ
と、そう考えていた。
彼は忙しい人で
活動するのは夜のうちが多いらしい。
…昼間に寝てるのかな。
でないと寝る時間ないもんね…。
でも、私のお店に顔出してくれてるよ?
…起きてるよね、昼間でも。
夜の仕事の日は、次の日がお休み?
なぁんて、
そんなどうでもいい事を考えていると
不意に眠気に襲われた。
あ、この寒いのに、眠れそう……
寒いから、の間違いかな。
宇髄さん来ないなら、
ちゃんと閉めるんだったなぁ…雨戸…
スゥ、と吸い込んだ自分の呼吸の音を最後に
私は眠りへと…………
キィン…!
という金属音が聴こえて
ハッと現実に引き戻される。
もしかして一瞬寝てたかも。
聞いたことのない音。
遠くから響いて来るその音は
近づいたり遠ざかったり。
割と長い時間続いていた。
何かがぶつかるような衝撃音。
風が強いから、
何かと何かが擦れ合っているのかな…
でも、何か叫んでいるみたいな…
声?のようなものも聴こえてくる、ような…?
風の音が激しくなってきて、
そのせいで起こる空耳なのかと思ったけれど
キィンキィンという音は
やっぱりちょっと不自然で…
——てめぇ待ちやがれ‼︎
……という、何となく聞き覚えのある声も
間違いなく、風のせいなんかじゃないはずで…
いや、風のせいなのではなく、
宇髄さんに会いたいという私の気持ちが聞かせている空耳なのかもしれない。
私はむくりと身体を起こし、
しばらくジッと耳を澄ませてみる。