第42章 おにごっこ 〜誕生日企画〜
空高く雲が渡り、
空気の乾きも気になる今日この頃。
夕ご飯の買い物の帰りに
私は美しい秋空に見惚れていた。
前を見て歩け、
そんな声が聞こえて来そうだ。
いけないいけない。
人とぶつかって、
つまらないケガでもしようものなら
何を言われるかわからない。
たまにしか会えないのに
叱られるのなんてイヤだ。
そんな事に時間を費やすくらいなら
いっぱい可愛がってもらいたい。
…なんちゃって。
私もそんな事を考えるようになってしまった。
別人みたいだな。
少し前の私からは考えられない事だ。
だけどそんな変化も、
ちょっと嬉しかったりして…。
お店を終えて、買い出しに寄り
家に辿り着いた私は、
強めに吹いて来た風の音を聞きながら
少しだけ迷っていた。
この辺りは人通りがほぼない。
山の入り口にあるからだ。
人の出入りがない山だから
私の家の前を通る人なんか皆無。
加えてご近所さんはずーっと向こう。
『ご近所』なんて言えないくらい遠い。
故に
夏の間は開けっ放しにしている縁側の戸。
空き巣が来ようにも
盗めるような金目のものは一切なく
私の命を取っても何の得もない。
というわけで
暑い時季はいつも開け放っているのだけれど…
今日はさすがに冷え込んでちる。
明日から霜月。
冬はもう目の前まで来ているのだ。
閉めようかな。寒いし…。
だけど開けておかないともしあの人が来た時
どこから入るんだろう…。
そう。
空き巣も殺人鬼も寄り付かないこの家で
あの縁側から侵入してくるただ1人の人。
言わずもがな、…宇髄さんだ。
…あれ。
じゃあ、雨戸は閉めて
玄関のカギを開けておけば
それで問題はないんじゃないかな?
でもどうしてだろう。
雨戸と縁側のガラス戸ならいいのに、
玄関のカギを開けておくのは
何だか怖い気がするのは。
慣れていないからかな。
…だけど家中のカギを閉めても、
ちょっとした隙間から入り込んで来そうだ。
そう考えると恐ろしいけれど
でもそれも彼ならと思うと
どうって事なく感じるあたり、
私はもう終わっている。
で、
結局どうしたかというと…。