第41章 輪廻 〜if〜 後
ヨシっと拳を握るナギリに、
「睦のトクベツは俺だけなのー、
もう帰れよーこの人たらしが」
先生はじとっとした目線を投げる。
「あなたにだけは言われたくないわー。
ていうか私、ほんとは営業に来たのに」
「結構です。
おたくのとこで教材とりませんから」
「ちょっと!そんなのひどいわ!
こんなに足繁く通ってるってのに!」
ナギリが先生の腕に手をかけて縋った。
…足繁く…だと?
「おかしいじゃない!
何で宇髄くんが、女の私に嫉妬するのよ!」
「睦の心を攫おうとするからだ」
…ムリ!
「私放置してイチャつくのやめて‼︎」
「やだ、…睦ちゃん⁉︎
どうするの泣かせちゃったわよ⁉︎
罪なオトコね!」
「何で俺だよ!お前のせいじゃねぇの⁉︎」
「泣いてないし!もう帰る‼︎」
先生の脇をすり抜けようとした瞬間、
長い腕にそれを阻止された。
「待て、帰るのはお前じゃねぇ、百鬼だ。
おい、」
先生はナギリを顔だけで振り返る。
「何だか知らねぇがもう解決したんだろ?
してなくてもこの状況見れば
帰るべきだって事くらいわかるよなぁ?」
先生に睨まれて、
ナギリは大きなため息をついた。
「営業しに来たのに…?まぁ…
仕方ないわね。出直すわぁ」
「助かるね」
「睦ちゃん、まったねー!」
ヒラヒラと私に向かって手を振るナギリに
全身の血が頭にのぼっていく。
「…っ‼︎」
もうひと言、投げつけてやろうとした瞬間
「余計な事はいいから帰れって!」
先生が私の口を手で押さえて叫んだ。
「余計ってなによー、挨拶じゃない」
「それが余計なんだよ!」
「はいはい、いいわよーだ」
つまらなそうにしたナギリは
ドアの向こうに消えた。
ご丁寧にも、美術室の戸まで閉める
ガラガラという音がしてナギリの気配が
完全に消えた頃…
私は先生の熱い口づけを
半ば強制的に受けていた。
さっきまでの怒りが燻っている私は
感情に任せて先生をめちゃくちゃに殴りつける。
当然先生には効果なしだ。
痛くも痒くもないと言わんばかりに
私が振り回す腕なんかほぼ無視。
それがまた私の怒りを煽った。
それでもさすがに邪魔に思ったのか、
無駄に大きな体に見合った力は
私を簡単に押さえ込む。