第41章 輪廻 〜if〜 後
「そうやって迷惑かけられんのも、
俺の喜びなんだよ」
「やだ……ほんとにおかしくなっちゃったの…」
本気で心配になる。
私がその思いを隠しもせずに見上げると
先生は私の口唇めがけて唇を落とした。
肩を竦めて驚く私になんか構いもせずに
「あぁ、おかしいよ。
そんなん、お前と関わったあの日からずっとだ。
ずっとイイコちゃんしてた睦が、
泣きながらワガママ言ったり
迷惑かけて来たりするんだぜ?
それも俺にだけなんだ、
そんな幸せな事ってねぇぞ」
私にはよくわからないことを
ひどくうっとりとした様子で語る。
「…どう考えたって
イイコの方がいいと思うんだけど」
「それは俺の好みの問題だからほっとけよ。
お前にはわからなくてもいい。
だけどなぁ、」
宇髄先生は私の頭を抱え直し
「あの、どうにかしてほしそうな目とか
ほんとはそばにいて欲しいくせに
言えなくて恥ずかしそうにしてるとことか、
ほんっと可愛すぎてよぉ、」
するっと頬ずりした。
「もう我慢も限界だよ…」
「なにを、言ってくれてんの…!」
「ほら!それだよその顔。可愛いなぁ…」
親指の腹で、私の頬を何度も撫でて
先生はしみじみと言った。
「どれだよ!やめて!」
その親指の動きを止めたくて
掌全体でキュッと握り込んだ。
「それだって。その顔!」
「まだ言うの!」
「お前天才だな。俺を惑わす天才…」
先生は言葉通り、
我慢の限界とやらが来たようで
大きな手で私の両頬を包み固定すると
真上から唇を合わせて来る。
「ん、…」
あぁ、もう…。
何が愛だよ。
与えるものだなんて言っておきながら
充分奪ってるよ。
矛盾してると思うんだけど…
離れた唇に瞼を開くと
先生の頬に残るキズが目に入りハッとした。
「ごめんなさい…痛かった、?よね…」
手を添えようとしてやめる。
触ったら痛いに決まってる。
触らなくたって痛いよね、ぴりぴりするよ。
「消毒しなくちゃ…」
取りに行こうと
先生の腕から抜けようとしたけれど
咄嗟に力を込められる。
まるで行くなと言われたようだった。