第41章 輪廻 〜if〜 後
声もうまく出せないまま。
こんなに情けない私を、
先生は愛しげに抱きしめていた。
でも先生の言う通り、
さっきよりも身体の震えは落ち着いている…
「そうかもしれねぇな。だって睦は
俺のこと信じきれなくなったんだろう。
睦の気持ちを裏切るようなマネを
しちまったんだよな…
ごめんな。でも、…俺なんかさ、
ほんとどうしようもねぇ男だったワケよ」
「……」
先生は頬を擦り付けて私を抱き込んだ。
とうとうその膝の上に乗り上げた私に
そっと寄り添ってくれる。
「っ‼︎耳ついてないの⁉︎
離せって言ってるんだよ!老化してんの⁉︎」
「はいはい、お前の悪態なんか
ただの愛情の裏返しだよ。
無意識に遠ざけようとしてるんだよなぁ?
他のヤツになら通用するかもしれねぇけど
俺にはムダだぞ。俺様は特別だからな」
「…なにが?」
「ん?俺はお前のこと、愛しちゃってるから
何しようと離してやる理由にはならねぇの」
残念でしたと、
先生は小さく笑った。
「…あい?愛ってなに?好きと違うの?」
「違うだろー」
「…わかんない」
私が先生を見上げると
先生はにっこり笑って私の額に唇を押し付ける。
「例えば、俺はお前を好きだ。
好きだから睦が過ごしやすい生活を
保たせてやりたい。だから守ってやるだろ?」
「うん…ありがと」
「おぉ、どういたしまして。それで、
ここに住まわせてやって食わせてやって…。
だけど俺はその見返りを求めねぇ。
睦がいいのがいいんだ。
与えるのが愛なのよ」
「…私が先生を嫌いでも…?」
「あぁ、そうだな。まぁ
好きでいてくれるに越した事はねぇんだけど」
「……」
「まだわかりにくいか?
じゃあ…あとはそうだなぁ……」
先生はうーんと唸る。
…まだ出てくるの?
「俺はもうお前以外は考えられねぇや。
睦以外は女じゃねぇ。ただのヒトだ。
そういうこと」
そういう、って言われても…。
…愛するのに
男も女もないような気がするんだけど。
「なんだよそのツラは。
まだ足りねぇの?しょうがねぇなぁ。
じゃ、アレだ、もう狂ってる」
「えぇっ狂ってる⁉︎」
狂ってるってなに?
何言ってるの?