第41章 輪廻 〜if〜 後
「離さねぇよ…」
「違うの、…っふるえが、とまらな…
離してよこわい…っ」
「怖いのか。何が怖ぇの?」
「さわられるの、…怖い…」
「…逆戻りかよ…」
チッと舌打ちをされて、
私はふと、ある事を思い出す。
そうだ。
少し前まで、誰にも触れないように
すごく気をつけて過ごしていたっけ…
犬も猫もそう。
なにか生き物に触れるのを避けていた。
私にさわらないでほしかったのに。
でも先生の事はなぜか大丈夫で、…
大丈夫だったのに、
今はどうだろう。
嫌悪感と寒気立つのを止められない。
眩暈までするの、
「先生ムリ!」
私はもう混乱の極みだ。
目の前はぐらぐら、心臓は早鐘を打ち
呼吸までまともに出来なくなってきた。
おかげで気持ちは乱れに乱れ、
もうこれは離れてもらうより他ない。
「おねが…はなして…」
腕にも声にも力が入らない。
震えるばかりで…
私を抱き込む先生の腕の力と
先生の胸を押し遣る私の腕の力には
あまりにも大きな差があって、
こんなに必死になって離れようとしているのに
まっったく歯が立たなかった。
「やーだね」
さっきみたいに、
先生の胡座の上に引き寄せようとする力には
何とか抵抗する。
そんな事になったら、
絶対にもう逃げられなくなる。
だから私は、
上半身は先生に密着しているのに、
床に膝をついて中途半端に腰を引いている
ヘンな格好だ。
「なんで…っ、」
「睦…俺がお前を見捨てると思う?
怖くて震えてんならさ、
ここは安全だって教えてやらねぇと…。
俺の腕の中なら、安心できたはずだよな?
忘れんなよ、俺はだーれだ?」
「……」
「あれ?名前も言いたくねぇくらい
怒ってんの…?」
心配そうな声を出すくせに
先生は私を強く抱きしめる。
「…‼︎なんで…!」
離せって言ってるのに
離すどころかむしろくっついてくるとか
あり得ないでしょ…⁉︎
「だって、落ち着いて来たろ…?
その調子…ちゃんと俺を感じれば、
お前は大丈夫なはずなんだよ。
だって俺のこと大好きだもんな?」
「ば、か、なの…?」
唇がうまく開かない。