第41章 輪廻 〜if〜 後
「言いてぇ事は、全部吐き出せたかよ」
その言い方が、
まるでわざとそうさせたかのように聴こえた。
「…わざと?」
「いいや、残念ながら結果だ」
結果…。
「いやどうかな…
途中からはそうかもしれねぇな。
睦は溜め込むクセがあるから」
先生は何事もなかったかのように
穏やかに話してくれた。
「吐き出してスッキリすんならいいが、
俺に謝らなきゃならなくなるなら
言わせるんじゃなかったな…悪かった。
しかも、俺も…割と好き勝手言ったよな、
ごめんな」
「そんなのお互い様だよ…」
言い合って、傷つけ合って…。
どっちも悪くないし、どっちも悪い。
「そうだよお互い様だ。わかってるじゃねぇの。
お互い色々あったはずだ。そんなのみんな同じ。
だから、その事で相手に遠慮すんのは
もうやめようぜ。睦…」
先生は私の目を向けさせて
「多分俺は、お前が思ってるよりも
ちゃんと睦を好きだぞ」
はっきりとそう言い切った。
「先生…?」
「睦のツラい過去ごと
抱きしめてやれる度量くらいある。
だからもう終わりにして、俺のとこにおいで」
長い両腕が伸びて来て、
壁に張り付いた私の身体を捕らえた。
「そうやって恐れるのは何でだ?
俺を軽蔑した?」
「…っ…」
先生の手が触れた所から
大きな不快感が広がっていく。
悪寒にも似た、吐き気を伴う程の。
言葉にもならなくて
ただ首を横に振るだけの私に
先生はふぅっとため息をついた。
「…もう諦めて、俺のとこにいろ。
その震えだって止めてやれんのは
もう俺しかいねぇだろ?」
「先生のせいじゃん…」
それでもまだ悪態をつき
素直になりきれない私。
先生はもう笑うしか無かったのか
私を引き寄せる手を止めて
「俺のせいか。
なら俺が責任持って治してやらなきゃな」
夢のようにきれいな笑顔を浮かべた。
それでも私の背中に回された手からは
不快感ばかりが湧き上がってきて…
「調子よすぎ…っはなして…!」
関係ない話で紛らわせようとするけれど
そんなものじゃ誤魔化しきれない。