第8章 続
こうやって、睦と戯れてる時間が愛しい。
大人しくされるがままになった睦に
満足した俺は、上機嫌で離してやる。
睦といえば、どうしていいかわからずに
目を泳がせている。
「…睦」
そっと呼ぶと、びくっと肩をすくめ両耳を塞いだ。
…何だ?
「そっ、それ何ですか⁉︎私に何かしたんですか?」
頬を染め、慌て出す。
「それって何だ?…何の事だ」
睦は1人、あわあわしている。
「何か、聞こえるんです」
「なにか?」
「耳の奥で、私を呼ぶのが聞こえるんですよ。
宇髄さんが、私の名前、そうやって呼ぶの」
ヘェ…
「それはお前…」
「…え?」
「俺のこと好き過ぎなんじゃねぇの」
「ええ⁉︎」
ゆでだこみてぇな睦に口づけを落とす。
可愛い舌の先に、小さく繰り返し吸い付くと
感じているのか、その度にぴくりと体を揺らす。
俺の肩に頭を預け、思い切り喉元を反らして
心地よさそうに口づけを受ける睦は
抵抗する素振りも見せねぇ。
…何でこんなに好きなんだ。
一日中こんな事してられそうな自分が怖ぇ。
丸一日、
こいつを好きにしてもいい日とかねぇかなぁ…
「なぁ睦、あいつらの事、
すぐに話さなくて悪かった。すぐに居なくなると思ってたから、余計な事は言わねぇ方がいいと思ったんだ。そんな話ししたら、お前は嫌な思いするだろ?
…結局、そうなっちまったけど。
俺は単なる弱虫だった」
さっきの余韻で蕩けきっている睦は
ぼんやり聞いていたが、
「弱虫じゃ、ない…だって、
私のため、ですよね?
今なら、わかります…」
くるりと体を返し、
正面から俺の胸に抱きついてくる。
「だいたいあの3人、
宇髄さんに必要な人たちなんですよね?
もう居てもらったらいいんじゃありませんか?」
「お前は嫌だろ」
「そりゃ良くはないです。でも
私のためにあの人たちを遠ざけるなんて絶対嫌です。
だって…あんなに宇髄さんの事愛してるのに」
…愛。
「…お前何言ってるか、わかってる?」
「わかってますよ。
宇髄さんはあの人たちの愛を感じないんですか?」
睦は真剣に俺を見上げてくる。
「…感じねぇ」