第8章 続
それに、だるい。
身体が。
もう何があったかなんて聞かなくてもわかる。
私は腕を枕にして顔を伏せた。
膝下を持ち上げて、足先をゆらゆら揺する。
…あれ?
宇髄さんどこにいるのかな。
私何で1人でいるんだろう。
この部屋、勝手に出てもいいのかな…
勝手な事しない方がいいかしら。
そんな事を考えながら、
目を閉じ、ぱたりと足を寝かせた時。
障子の向こうから声が聞こえて来た。
聞き覚えのある可愛い喋り方と、
初めて聞くハキハキとした声。
私は目だけ、開いた。
「須磨!あんた何するつもり⁉︎」
「睦様にお水を出すだけです」
…また様って言ってる…。
「バカね、そんな事して、
また余計な不安を睦様に与える気なの?」
「ひどいです!違いますよ!」
「また誤解させるから、
あんたは顔出すんじゃないよ!」
「どうしてですかー!私は睦様の為に…」
「こないだだって余計な事言って誤解させたでしょ⁉︎どんだけ迷惑かけるのよ!」
寝ているだろう私を気遣ってか、
小声でのやり取りだが…筒抜けだ。
「そんな事ないですー」
「天元様がお話しされるまで
余計な事すんじゃないよまったく!」
「だって私たち、ほんとの嫁じゃないのに…」
「あんたが睦様に嫁だって言ったんでしょうが!嫁でもないのに!
それまで天元様がその事に関してどれだけ睦様に気ィ使ってたと思うのよ!バカ!」
「またバカってー!」
「バカなもんはバカよ!バカ!」
……
「気を、つかっていたの?」
つい声に出してしまい、ぱっと、口を押さえる。
しまった。
声に出ちゃった…
「…」
「…」
障子の外も静かになってしまった。
「あなたたち何をやっているの」
…雛鶴さんだ。
「…睦様、お耳汚し、
申し訳ございません。
2人はすぐに連れて行きます」
あ…
「待って下さい!あの…少し、
お話しをして下さいませんか?」
「…よろしいのですか?」
雛鶴さんは少し困っているような声だ。
「…はい、お願いします」
「睦様が、
そうおっしゃって下さるのならば是非…」
「ありがとうございます」
「では、隣の間でお待ちしております」
「……はい」