第8章 続
俺は、閉店間際の店まで来ていた。
間に合って良かった。
暖簾をくぐると、
一服している『おじちゃん』と、
横で茶を飲む志乃さんがいた。
「おや宇髄さん!こんばんは」
「こんばんは。すみませんお疲れの所」
「いいのよ。あ、でもごめんなさい。
睦ちゃん、まだ帰ってないのよ」
申し訳無さそうに言うが、
少し、視線が痛ぇ。
こりゃあ…色々聞いたな?
「はい今、私の屋敷におります。
あちこち連れ回してしまいまして…
すみません眠ってしまったので、
今日はこのまま
お預かりしてもよろしいでしょうか?」
「え?睦ちゃんが?
あらあら、しょうのない子だねぇ…」
「まぁそう言う事なら、
起こすのも可哀想だし
そのまま預かってもらおうかねぇ。
すまねぇな宇髄さん」
『おじちゃん』の方は何も知らねぇみたいだ。
言わずにおいてくれてるのか志乃さん…。
「はい。任せて頂いてありがとうございます。
睦とはちゃんと話をして
不安も誤解もないように致します…」
俺は志乃さんの目を見て言った。
彼女はすぐに察してくれたようで、
にっこり笑ってくれた。
「ええ。私は最初から宇髄さんの事、
ちゃんと信じてますよ。
睦を幸せにしてくれる人だって」
「…?お前何の話ししてる?」
『おじちゃん』は不思議そうに言う。
「いいのよ。そうなんだから」
「そうって何のこった。なぁ宇髄さん?」
2人のやり取りについ笑ってしまった。
俺はこの2人が、大好きだ。
…あれ…。
ここ、何処だっけ。
私はぱちりと目を覚ました。
最初に見たのは高い天井だ。
…うちじゃない。
それはわかる。
さっきのいかがわしい店でもない。
それも確かだ。
じゃあ、何処?
私はコロリとうつ伏せになり、
肘をついて少し上半身を持ち上げた。
上質な畳、ふっかふかな座布団、
漆塗りの文机、その上に、キラッキラなライト。
何だあのキラキラは。
この部屋に、激しく似つかわしくない…
変に派手だ。
…派手…
そういうの好きな人が、いるな。
もしや、彼の部屋か…。
その時、私はやっと、
自分のナリがひどく乱れている事に気がついた。
髪はぼっさぼさ、襦袢もはだけている。
着物はちゃんと衣紋掛けにかかっているあたり、
さすがは彼だ。