第8章 続
「睦様が?」
「1人残して屋敷出んのもなぁ。
もし起きた時に混乱するだろうし」
「…私たちがいた方が混乱するのでは…」
雛鶴の鋭い指摘に…
それもそうか。
今、まだ解決してねぇしなぁ…
「…だいたいお前ら、
いつまで俺の手伝いしてくれんの?」
「えぇ⁉︎お邪魔ですかぁ⁉︎」
泣きそうな須磨。
「いや、邪魔なワケねぇだろ。
でもよ、
決別するとか言いつつそんな気配ねぇし。
どうするつもりかと思ってよ。
好きにしていいんだからな?」
不安そうに見てくる3人…。
「…あいつこじらせたのは
俺のせいだから気にすんなよ」
「…天元様ありがとうございます。
私たちはできる限りお力になりたいのです。
私たちを自由の身にして下さった。
でも、睦様が
快くお思いにならないと思うんです。
なので…」
そこで言葉を切り、しゅんとする3人。
あーあ…
「そんな顔すんなよ。…ま、その話は保留な。
今は睦の事頼みたい」
「睦様が目覚めてからではだめなのですか?」
「いつ起きるかわからねぇ。
暗くなる前に
睦の無事を伝えて来なきゃならねぇ」
「じゃあその伝言、あたしが行きますー!」
須磨がはいはーいと手を上げるが…
「いや、俺以外の、しかも女が行ったんじゃ
向こうまでこじらせちまうだろ」
「では睦様が目覚めないうちにお早く…」
雛鶴が承諾してくれる。
俺は佇まいを直すと
「よし。じゃ頼むぞ」
玄関へ向かう。
すると
「あの…」
と3人に止められる。
「…何だ?」
振り返ると、
3人は言いにくそうに下を向いた。
…
「…何だよ」
「…あの…天元様…唇に、紅が…」
……。
俺は無言のまま、親指の腹で自分の唇を拭った。
がっつり、紅がついた。
…睦と致しましたと、
言っているようなもんだ…許せ睦。
「助かった…」
このまま志乃さんに会っちまうとこだった…。