第41章 輪廻 〜if〜 後
「え?まだ足んねぇの?」
わざと、すっとぼけて見せると
「足りるわけないじゃん!もっと…」
睦は額を俺の胸に擦り付けて
甘えるような仕種をした。
…きっと、
その次の言葉を言いあぐねているだけなのに
そこで途切れさせられると
やけに淫りがわしいというか…
イヤラシイというか、
勘違いしそうになるんだけど。
なんて。
俺がおかしな事を考えているとも知らずにいる睦は、
消え入りそうな情けねぇ声で、
「もっと聞かせて。先生の話」
ぽつりと言った。
…もしかして、眠くなったのか。
「俺の話…なんか、
寝しなに聞くような話じゃねぇぞ?」
「いいの。寝るまで聞く…」
あぁ、
寝るまで、なんて。
もうそんなに時間は残りそうもねぇくせに。
「そーねぇ…」
すぐに寝てしまう事を予見した俺は
適当な話を見繕って
睦に話して聞かせた。
他愛もない、日常の話だ。
それでも睦は、
心地よさそうにうんうんと頷いて
しばらくは耳をそば立てていたが
とうとう眠気に負けたのか
そのうちスウ、と寝息を立て始めて
穏やかな眠りに落ちていった。
穏やかな日々は疾風のように流れて、
まだほんの半月しか経っていないのに
1つ歳を取ったくらいの気になっていた。
イヤな事が無いのってすごく心が楽。
最近、何をしても楽しいんだ。
学校では相変わらずひとりだけど…。
…いや、あの男子生徒は
事あるごとに私に絡んで来るよ。
そういえばあの後、
飼い犬は無事に帰ってきたらしくて
泣いて喜んでいた。
それでもまだ犬扱いされてる気がする。
よしよしされたり、
スキンシップが多くてちょっと困っていた。
でもその度に先生が助けに来るから
なんだか私はくすぐったい。
守られてるような気がして。
先生とは…
特に進展もなく。
それというのも、私が前進しないからだ。
自分の気持ちに確信が持てないまま半月。
きっと、
私は認めるのが怖いんだと思う。
認めたその後が、
どうしても怖い…
私が嫌がるから、
先生はキスもしてこないけれど、
男の人の力の強さは、
イヤというほど知っている…。