第41章 輪廻 〜if〜 後
「……そんなに美味いの?」
向かいに座って、
この寒いのに
缶ビールをぐびくび飲んでいる先生が、
私を眺めながら感心したように言った。
……
おいしい、とか
何も言っていないというのに、
そんなに伝わってしまうほど
顔に出ていたのだろうか…
ほんとにお子ちゃまか。
さすがに恥ずかしい。
「コンビニすごいねぇ」
恥ずかしいながらも、
もうバレているのだから
今更隠すのもおかしな気がするから、
開き直って話を進めてしまおう。
「ケーキ屋が泣くぞ」
なんだって⁉︎
「そんな事ないよ。
さすがにケーキ屋さんには敵わないでしょ。
ひとつずつ手作りだよ?」
「コンビニもがんばってるけど」
「なにそれ!どっちを褒めても
どっちかが泣くじゃん!
意地悪な言い方しないでよ」
「ンな真剣になるなよ」
ケラケラ笑って先生はまた
缶ビールを煽る。
程よく酔っているのか
先生はすごくご機嫌だ。
…珍しい。
私がここに来てから、
先生がお酒を飲んでいる所なんて
見た事がなかった。
初めて見たのだ。
「…先生、今日はお酒飲むんだね」
「んー?あぁ、お祝いー」
「お祝い?なんかあったの?」
「あったよー」
「…そうなんだ」
お祝いするほどの何か…
何だろう。
……
何のお祝いなのかを
いつまでも訊かずにいた私に
痺れを切らした先生が
「訊けよ」
核心ど真ん中を突いてくる。
…だよね。
「なんのお祝いなの?」
質問をした途端、
にっこにこになって、
「俺の恋が成就したお祝い」
語尾にハートマークでもついているかのような
甘い声を出した。
「先生の恋……」
なんだろうな…
この巨体に似つかわしくない
可愛い言葉だな。
…先生の、恋が成就…?
って、それはもしや、
「私か」
「…当然だろ」
マジで。
でも…そうか。
想いが通じた、みたいな事なのかな。
この、…実感がないのはどうしてだろう…
先生みたいに、喜べないみたい。
嬉しいけど……こんなものか。
実感が湧かないのだ。
それに多分、2人の『好き』には差がありすぎる。