第41章 輪廻 〜if〜 後
遠回しに、自分はそうなんだと伝えてみる。
そうすれば
こいつも納得しやすいかと……
流されてくれるかなと嫌らしい事を考えた。
すると案の定、
「…わかんない」
口ではそう言いながら
きもーちもたれかかってくる仕種を見せる。
出たよ天邪鬼。
わかっちまっただろ?
こうしてもらうと、
心も溶ける。
強張っていた体も、頭も
ぬくもりに溶けていくんだよ。
あの日俺が作った、お前の空間。
睦の為のセーフティゾーン。
あの時はきっちり隙間があったけど、
今はぴったり埋められた。
ここは安全だってわかれ。
ここに居れば大丈夫だと。
それだけで俺は満足だ。
「じゃわかるまで、こうしてるわ」
「…それもいいかも」
少しずつ解れていく心。
こいつが、俺にだけ心を開くといい。
そうすれば全力で守ってやる言い訳が立つ。
睦が俺を求めているからだと。
だって俺は、こいつを守ってやりたいんだ。
相変わらず汚ねぇ事を考える俺に、
「ごはん出来てるんだ」
もう気が済んでしまったのか、
睦がこちらを見上げた。
間近でばっちり目が合って、
……つい時が止まったかのように凝視める。
「…先生、ごはん」
「っ…あぁ、わかってる」
「手洗いうがいするんだよ?」
「…はいはい」
この俺様がガキ扱いですよ。
俺にこれだけさせといて
1ミリも靡かねぇ女なんてこいつくらいだ。
——靡かせてぇの?こいつの事…
自問した俺は、
慌てて睦から手を離す。
何を考えてんだか。
「メシ食うわ」
あっさりと踵を返しベッドルームへと向かう。
やべぇやべぇ。
邪心が顔を覗かせやがる。
ちょっと気を引き締めねぇと。
鞄を置いて、洗面所へ直行。
なるべく睦を見ねぇようにして
俺は言われた通り、手洗いうがい…
何を素直にやってんだよ。
あーあ、呆れて物も言えねぇなぁ。
「…!……‼︎」
それにしてもこれ美味ぇ…
「…い!…先生!」
「おぉ!」
呼ばれている事にようやく気づき
反射的に返事をした。
「考え事?考え事してもいいんだけどさ…」