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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第41章 輪廻 〜if〜 後





「えぇ…でも私なんて別に…」

私なんて?
別に?

「自分を、卑下すんな。
お前ならきっと誰とでも仲良くなる」

「なに、先生。櫻井さんから
相談でも受けてたわけ?」

女子生徒の方がぽかんとして俺に話を振った。

…相談。

「いいや、受けてねぇ。
でも友達はいねぇよりいた方がいいかと思って
勝手に世話焼いた」

「へぇ…」

まるで、珍しい、とでも言いたそうな目だ。

「別に友達作るぞって意気込む必要はねぇだろ?
普通にしてて、普通にそれが出来りゃ
多少楽になる事だってあるだろうから」

「先生、まとも」

「え、俺まとも?マジかぁ。
つまんねぇなぁ」

『普通』とか『まとも』とか
自分には似つかわしくねぇと思っていた。
でも…
睦の事は、別だ。
こいつの事はちゃんとしてやりたいと
心から思っている。

高校生らしく。
今しか味わえない楽しみを。

楽しむ権利は
こいつにだってあるはずだ。
あともう、ほんの2ヶ月足らず。

それを見守るのは俺の義務になった。
義務だなんて、
そんなモノに縛られんの
まったくゴメンだったのに
全く嫌な気がしねぇんだ。

むしろ楽しんでいる自分がいて
俺自身が1番驚いている。

「櫻井さんが描いてる絵も
先生が言うほど悪くないと思うよ。
綺麗に晴れた青空だって
気分によっては灰色に見えるし、
何をどう表現したかなんて
自分がわかってればいいわけだから」

隣から覗き込んだ男子生徒も
あっさりと睦を受け入れた。

ほらみろ、こんなに簡単だろ?
そう睦に笑ってやると、
ちょっとだけ照れ臭そうに
睦はきゅっと唇を引き結んだ。

うんうん。
いい傾向だ。

「へーえ、良かったなぁ櫻井。
わかってくれるってさー」

「先生よりも感受性が豊かなんだよ」

睦は精一杯の憎まれ口をたたく。

そんなモン、ただの照れ隠しだろうが。
全部わかってるっつぅの。

「はいはい。
せいぜいお絵描きがんばってねぇ」

少しだけ距離の縮まった若者たちを置いて
俺は授業へと戻ったのだった。


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