第41章 輪廻 〜if〜 後
そのまま、固まっている私に
晴れやかな笑顔を乗せて
「食おう!」
そう言った先生…
私はこの人なら大丈夫だと思った。
大きめのスプーンでひと掬い。
それを口元へ運び、ふぅっと息を吹きかけた。
食べ頃を見計らいパクッと食らいつく。
おいしい!
そう思ったのに口に出せなかったのは
ちょっと欲張って頬張り過ぎたから。
言えなかった分、
私はこくこくと頷いておいしい事を
先生に伝えた。
その様子が可笑しかったのか
先生はプッと吹き出して、
「うまいか」
少しだけ安心したような言い方をした。
「めっちゃおいしい!」
しゃべれるようになった私は
思いの丈を先生にぶつけてみる。
この人は、それを許してくれると言ったから。
「そりゃよかった」
「先生の魔法のおかげだねー」
「俺の魔法?」
「うん。おいしい魔法かけるんでしょ?」
さっき言っていた、
気持ちを込める魔法。
「あー…そうね」
先生は曖昧な返事をして
自分もひと口、シチューを食べた。
そんな目で見られるような
変な事を言った覚えはないんだけどな。
先生が作ったホワイトシチューには、
自分でも言っていた通り、
具がたっくさん。
定番の具材の他に
えびもブロッコリーもきのこも…
何だかゴロゴロ入っていた。
味もちゃんとしみてるし
初めて食べる味なのに懐かしいような…
身体中に行き渡るような、
そんな幸せな感覚に浸る事ができた。
それと、
このおいしさを誰かと分かち合えるという事が
ものすごく大きな幸せを感じさせる。
私は、1人だろうがなんだろうが
おいしいものはおいしいと思っていた。
私がそう感じないのは
おいしい物を食べていないからだと
ずっと思っていたのに。
誰かと食べるっていうだけで
2倍おいしい気がする。
あの渡り廊下で先生が言っていた事が、
今ようやくわかった。
そんなものがあっても生きて行けないって…
本気で思ってたのに。
今までの考えなんて
ほんの一瞬で覆されてしまった。
私って結構、単純だったのかな?
知らない事がたくさんある。
1人では気づけない事がいっぱいある。