第41章 輪廻 〜if〜 後
「それは、あの夜か…?」
「あの夜?…あぁ、一昨日ね。
先生がお当番の日」
夜の学校の前で見つけてくれたよね。
「……だめだ、やっぱ許せねぇ」
「え?なんて…?」
空気みたいな話し方をする先生が
なんて言ったのか聞こえなかった。
多分、聞かせる気はないのだろう。
それでも何を言ったのか気になって
聞き返してみたけれど
先生は下を向いたままだし、
膝の上の手は血管が浮き上がるほど強く
拳を握りしめられていくばかりで…
きっと良くない事を言ったんだろうな。
それはあの人に向けて言ったのか
それとも私に対して言ったのかが気になった。
「私、悪いことした…?」
先生は弾かれたように顔を上げる。
すごく真剣な目だった。
怖いくらいだ。
そうだよね。
私、言われるままにやってたけどさ…
悪い事してたんだよね。
「お前は被害者」
ぐりぐりとおっきな拳が頭に押し付けられる。
「痛い!…私なんにも言ってないじゃん!」
「考えてる事がダダ漏れだ」
「ウソだ!そんなの誰からも言われた事ない」
「そんなこと言ってくれるヤツ、
お前の周りにいなかっただろうが」
「……」
「……悪ィ」
「いいよ。ほんとの事だった」
そうだ、本当だ。
私には
そんなこと言ってくれる人もいなかったや。
そりゃ言われた事があるわけないよね。
申し訳なさそうに謝罪するけれど
先生は間違ったこと言ってないし。
「ごめんな、」
「別にいいってば」
大した事じゃないのに、
そこにこだわる先生が可笑しい。
少し笑ってしまった私の頭を
「俺がよくねぇんだよ」
先生が引き寄せて肩のあたりに押し付けた。
……
何してんのさ。
なんかこの人、距離近くない?
この間から思っている事だけど…
気安くしすぎだよね。
先生だよね?
友達じゃないんだけど。
そう思いながらも
私も何も言わない。何もしない。
何だか、
こうされると優しい気持ちで満たされるから。
それがとても心地いいから。
ずっと分けてもらえなかった愛情を、
やっと与えられているような感覚…。
勘違いかもしれないけれど、
私はきっと喜んでいるんだ。