第41章 輪廻 〜if〜 後
それがわかって、
「うん…ありがと」
私は驚くほど素直で穏やかな気持ちになった。
こんな事もあるんだ。
オトナに対してありがとうなんて、
こんなに簡単に口にできるようになるとは…。
このごろ初めて知る事が多すぎて
戸惑うけれど、…
なんでかな…嫌な気はしない。
「俺は…お前の母親に
犯した罪を償わせればいいと思ってる。
けど、そうなった事でお前が居づらくなるんなら
それは違うような気がするんだよ。
だから、とりあえず事実を認めさせて、
お前の気持ちもちゃんと伝えた」
私の気持ち、っていうのは、
もうあの人の所には帰りたくないって…
その事かなぁ?
顔が見たくないわけじゃないよ。
だけど見てしまったら
私はまた流されてしまうから会わないの。
それから、ほんと言うと、きらい。
好きなんだけどね。
もう、あんな事はしない。
あの人がいいならしてあげてもよかったけど
…もう嫌になっちゃった。
だって…私だって、愛されたいよ。
あの人の事を想って、私ばっかり頑張っても
全然返って来ないんだもの。
家族は無償の愛っていうけれど、
子は親にそんな愛を与えられるからこそ
それを覚えていくんじゃないのかな。
親から与えられてもいないのに、
それをこの先も続けられるほど
私はできた人間じゃなかったみたいだよ。
でも私をそんな人間にしたのは
他でもない、お母さん自身なんだよね。
もっと上手いことやればよかったのに…。
それでも今まで、
よくやってきたよね。
愛されなかった割には、頑張ったよ私。
「櫻井が落ち込む事じゃねぇよ?
お前はいいんだ、悪くねぇ。
今まで母親の為にやってきたんだから」
知らないうちに落ち込んでいた私に
先生が優しく声をかけてくれる。
…気ィ遣わせちゃった。
「これからも、やってもよかったんだけど」
「こら」
軽く叱るように、先生が眉を寄せた。
…わかってるもん、そうじゃない。
「でももう嫌になっちゃったんだよ。
1日サボったらいっぺんに2人の相手させんの」
「…ッ⁉︎」
「あり得ないでしょ?
私の事なんかなーんにも考えないの。
もういいやってなるじゃん?」