第8章 続
熱が、ぶり返したのかな…。
どうしよう、こんな所で…。
中は茶屋のようで、いくつも卓が並んでいた。
でも女性は私を半分担いで、階段を上っていく。
動くのが、つらい…。
「あの…そこでいいので…少し、休ませて下さい…」
「上には布団を用意してあるから、
そっちの方がいいだろ?」
…え?
「布、団…?」
どうしてそんな物が用意してあるの…?
回らない頭で、…でも何か、違和感を覚える…
「大丈夫だよ、すぐだから」
「…はな、して下さい…」
口はきけるのに、身体はまったく言う事を聞かない。
離して…。
そのうち、障子の並ぶ2階にたどり着く。
そこかしこから、女の嬌声が聞こえてくる。
何、ここ…
私を支える女の腕をガッとつかんだ。
「今更遅いんだよ」
ニヤリと笑う、恐ろしい顔。
「旦那、上玉だよ。お代ははずんで貰うからね」
冷たい声で障子を開け、私をそこへ放り込んだ。
無様に転がる私。
「わかってるよ。お楽しみの後でたっぷりやるさ」
そう言って、転がった私に馬乗りになる男。
いい着物を着た、わりと若いその男は、
私の顎をつかみあげ、
「へぇ、こんないい女、こんな田舎にいたのかね」
ニヤッといらやしく笑った。
私は動かない身体に鞭打って、
顔を思い切り背け、
そいつの下から這い出ようともがく。
「逃げようってのか。そんな体で…。
いいねェ、逃げてごらん」
そう言って私の上にのしかかってくる。
着物の合わせにぐっと手をかけ、
首筋に顔を埋めて…
「…っや!いやだ!」
怖い!助けて…誰か…
「身体、つらいだろう?おとなしくしていれば、
私がよくしてやるから」
緩められた襟元から覗く肩に唇を寄せてくるその男。
「やだっ助けて…宇…っ…!」
そう叫びかけて、止めた。
誰を、呼ぼうとした…?
…そう、だよね。
だって私、彼の事…大好きなんだ。
でも、
さっき…彼の話し、聞かずに、顔も見ずに
逃げ出してしまった。
今まで言えなかったのを、1番苦しんでいたのは、
きっと彼なのに…。
あんな態度をとった、報いなのかもしれない。
こんな所で、知らない男にこんな事をされて
顔向けできないのは私の方だ。
「いやっ!はな…して!」
「気丈な娘だな。
もうどうにもならないのはわかっているだろう」