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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第8章 続




「よお」

「…」

「元気になって、よかった。
…睦、弁解、させてくれねぇか」

聞いて、くれるだろうか。
俺は、こいつを不安にも、不快にもさせただろう。
素直に聞いてもらえるなんて思ってねぇけど、
こうする他、思いつかねぇんだ。
でも睦は、首を振って拒否した。
小さな拳で、俺を何度も殴りつけ突き飛ばす。

初めて味わう絶望感。
取り付く島もねぇ。
何を言っても、きっと届かねぇ。
一声も発しないまま、睦は、
俺の元を走り去って行った。
残された俺はただ、
その場に立ち尽くすしか出来ずにいた…














初めて来たその町の外れ、
土地勘もなく、ふらふら歩いていると、
何だか淋しい場所に出た。
人通りも少ないそこに差し掛かった時、

「お姉さん!」

肩をぽんとたたかれた。
振り向くと、私よりも少し年上くらいの
女性が微笑んでいた。

「1人かい?お茶の試飲をしてるんだ、
一杯どうだい?」

…お茶。

「時間があったらでいいよ。
うちで新しく出してるお茶なんだ。
若い子にも通用するか、試してくれないかい?」

時間はいくらでもある。

「…はい」

ちょうど喉も乾いてる。

「ありがとう!助かるよ。じゃコレ…」

小ぶりの湯呑みに、
きれいな若草色のお茶が入っていた。

「いただきます…」

口をつけ、一口含むと、
ひどく甘い香りが鼻をくすぐった。
ごくんと喉へ落とすと、
更に甘い香りが広がった。

「…甘くておいしい…!」

砂糖のような甘さではなく、もっと上品な…
お茶由来のものだろうか、不思議な味だ。

「おいしいかい?よかった!
あんたみたいな若い子でも効くって事だ」

「…え?効く…?」

しばらくすると、どうした事か、
にこりと笑う女性が、急にぐにゃりと歪んだ。

「あれ…」

病み上がりでこんな遠出をしたからかな、
眩暈がする…。

「…どうしたんだい?大丈夫?」

その女性が私の肩を支えた瞬間、
頭の中に手を突っ込んで脳みそを揺さぶられるくらいの衝撃が私を襲った。

「おいで?奥で休むといいよ」

「…すみま、せん…」

「いいからいいから。大丈夫だから、安心おし」

女性に引きずられるように、
その建物の奥へと連れて行かれる。
立っているのもままならない。
視界もぼやけて、体が熱い。


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