第41章 輪廻 〜if〜 後
急に大きな声を出した先生に
全身が竦んだ。
びっくりした…
「は、い…」
「……」
私が身を硬くした事に気がついたのだろう。
先生は息を凝らした。
でも、軽率でバカな事を言ったのは私の方だ。
先生はそれを本気で叱ってくれた。
怖いのは
過去の記憶のせいであって、先生じゃない。
今のは、先生の方が正しかったってわかる。
「ごめんなさい、」
ちゃんと目を見て素直に頭を下げる私に
先生が表情を緩めたのがわかった。
「いいよ、でもこれからは
絶対ぇにあんなこと言うな。
俺がもう言わせねぇからな」
「…うん」
多分、もう絶対に言わないと思う。
「さ。じゃちょっと話しようぜ。
気になってる事もあるだろ?」
そう言って立ち上がった先生は
もうすっかりいつも通りで、
私はすごく安心した。
怒りを引き摺らない。
いつまでも私を責めたりしない。
ピンポイントで叱ってくれて
関係ない所は攻撃しない。
…すごく新鮮だ。
何の事を叱られたのか、
自分のどこが悪かったのかがよくわかる…。
「櫻井?…立てるか?」
座り込んだままの私。
ぼーっと先生を凝視めていたのを
立てないと勘違いしたようで、
私の両手を取ってグイッと引き上げてくれた。
「わぁ…っ」
飛び上がる勢いで引っ張り上げられて
力の差を見せつけられた思いだ。
そりゃこの体の大きさ。
それに見合う力があってもおかしくないけれど…
あまりにも簡単に持ち上げられて
軽くショックを受けた。
悪い意味じゃなくて…
私ってそんなに弱いんだなぁと。
「ほら、リビング行くぞ。
気になってる事だらけだろ?」
何でもない事のように
結構重要な事を言ってのける。
そうなんだよ、
あの人と話し合いをして来たはずなんだ。
それが、何だか
わけのわからない会話を繰り広げたせいで、
調子を狂わされた気分…
…もしかして先生が仕組んだ事なのかな。
私の気持ちをほぐしてくれるための
計らいなのかもしれないと
つい深読みしてしまう私。
悪いクセ。
先生に対しては
余計な事を考えるのはやめよう、って
決めたというのに。