第41章 輪廻 〜if〜 後
「根っからのお父さんなの?」
「だから誰がお父さんだ」
「知らないけど。お父さんて優しいイメージ」
「お前みてぇなでっけぇ娘いてたまるか。
いいから!腹!」
先生は思い切り毒づいて話題を変える。
……
「…痛くないんだ」
「いて、…くねぇの?」
変な言い回し。
いてぇよな、って言うつもりが
私が痛くないなんていったものだから…。
「うん。もう、いてくねぇのよ」
先生の言葉を真似て伝えると
訝しげに覗き込んで来た。
だけど…
自分も胃の辺りに手を当ててみるんだけど…
「治った」
本当に痛くないんだ。
「薬飲みたくねぇだけじゃねぇだろうなぁ?」
「そんなわけない!」
まるっきり子ども扱いされて
少なからずムッとした私は
ムキになって言い返した。
…そうする事が既に子どもだ。
そんな私を優しく見下ろして
「そっかそっか。淋しかったんだな。
遅くなって悪かったよ、」
私の頭のてっぺんに、その大きな手を乗せた。
……
なに、この感じ。
こんなゆるゆるなのがこれから毎日続くの?
大丈夫なのかな、
私きっと腑抜けになると思うよ。
でも、ちょっと待って?
「先生、それはさぁ…」
「あぁん?」
先生は手をどかして私の目を覗き込む。
その表情はいつもの『先生』の顔じゃなくて
完全にオフの顔。
きっと休みの日に、おうちにいる時の顔だ。
「優しくして安心させておいて
寝込みを襲う的なヤツ?」
割と真剣に訊いたのに、
「てめぇほんっと…ほんっっとによぉ、
この俺様をなめてんだろ。
誰がンなめんどくせぇ事すんだよ、
襲うならもうとっくにやっとるわ」
「わぁ、最低」
「襲ってねぇじゃん?襲ってねぇよな?
最低どころか、最高だろうが」
「ウラもないのに優しくすんの?」
「お前なぁ……
お前が知ってるオトナとは
ひと味もふた味も違うのー。
俺はものすごい紳士なんだよ、残念な事に。
簡単に襲ってもらえると思うなよこの野郎」
何、襲ってモラエルって。
とんだ紳士がいたもんだ。
「へぇ…。別に、お金くれるんなら
ヤる事ヤってもいいよ?」
「こら睦!滅多なこと言うんじゃねぇ!」