第40章 クリスマス
開いた目が、どうした?と語っている。
でも、特に言うことはないんだ…
焦りたくなかっただけ。
優しく、してほしかっただけ。
わかってると言うように目を細めて
私の顎を掬い上げるように、
もう1度唇を重ねた。
きっとこのままずっと
甘い時間を過ごす事になるんだなと思った瞬間…
私の頭をあるものがよぎった。
…だめだ!
「待った…!やっぱり待って!」
「…っおい!」
彼の後ろ髪を乱暴に掴み
ぐいっと後ろに引っ張った。
不意打ちをくらって
さすがに上体を仰け反らせた天元が、
それでも私を離すまいと
ガッと押さえつけた肩。
バランスを崩して彼の胸に突っ伏しても
まだ髪を離さない私に
「いっ…てぇから離せ!」
天元は珍しく声を荒げた。
「ほんっとお前はさぁ…
よくもまぁ、あの甘い雰囲気をぶち壊せるな」
もう天才の域だと、
ぶつぶつ文句を言いながらも
私には結局怒り切れない天元は
諦めた目でこちらを見下ろしている。
「ごめんなさい…。でも、
せっかく贈り物、用意したから…」
「……贈り物って」
「クリスマス、…」
「ガキのモンじゃねぇの?」
「子どもだけって、
決まってなくてもいいでしょ?
私はサンタじゃないし、…
ほんとはお正月用にずっと頑張ってたんだけど
ちょうどいいし、今日に間に合わせたくて」
私は彼から離れ
箪笥の中に仕舞っておいた首巻きを取り出した。
天元の元に戻り、私の手でその首に巻きつけ
端を襟元に仕舞い込んだ。
「あったかいな……編んだのか?」
「うん、」
「だから最近、指先冷たくしてたのか…
忙しそうにしてたのもせのせい?」
ちょくちょくこの部屋に、
火鉢にあたりに来ていた私を思い出しながら
天元は首巻きに手をやった。
「柔らかいしあったかい。ありがとな」
「うん。私もね、お揃いで編んだんだ」
天元のと同じ、
深い紅色の毛糸で編んだレース編みの肩掛けを
羽織って見せると、
「よく似合ってる」
褒めてくれるみたいに頭を撫でてくれた。
「ありがと…!
一緒にお出かけする時にしてね?」
「一緒じゃねぇ時もする」
あ…
「ふふ…嬉しい。
天元は何色でも似合うねぇ」
襟元を直しながら笑う私に手を伸ばし
「睦にもよく似合ってるぞ。
上手に編んだなぁ」