第40章 クリスマス
「はいはい」
くつくつと笑い
あーんと口を開けてくれる。
私は嬉々として
そこにチョコレートのカケラを放り込んだ。
口内で溶かしきり味わった後、
「美味い」
天元は目を見張った。
「んー…でもやっぱ甘ぇ、」
淹れておいた渋めのお茶をぐいっと煽った。
天元の部屋に2人きり。
さっきまでみんなで賑やかにしていたからか
なんだかとっても静かに感じた。
「甘いからおいしいんだけどな」
「それは好みの問題だからなぁ」
「まぁ…それはそうだけど」
「いいじゃねぇか。
俺が食わねぇ分、
睦の取り分が増えるだろ?」
笑いながらも、本気で言っている様に聞こえた。
「それは嬉しいけど。
だいすきな人と幸せを分かち合うのも
すごく嬉しいんだよ、」
「…そうか。そうだな、よくわかる」
大きく頷いた天元は
私の肩を抱き寄せる。
「ほんと…?」
ならチョコレート、食べてくれるのかな…
そんな事を考えた矢先…
食べられたのはチョコレートではなく
私の唇だった…
「………」
もう、さすがの私だって、
天元の言いたいことはわかる。
この鈍感の塊である私ですらだ。
「私からじゃなくて、…食べて、」
私よりも熱を持った口唇が
もう1度私のそれに触れた。
「天元…っ」
「睦が食べて、なんて言うから…」
「ちがう…!チョコレートを」
「もう食ってるようなモンだろ。
甘い味がちゃんとする」
天元はテーブルの上にある箱の中から
小さく砕いたカケラをひとつ取り出し、
「ほら、あーん、」
私の顎を持ち上げ口を開けさせて、
そこへぽんと放り込んだ。
そして私が口を閉じるよりも早く
そこに舌を這わせる。
お互いの舌で甘いチョコレートを挟み
溶かすように擦り合わせた。
確かに一緒に食べている。
分かち合えているのかもしれないけれど。
甘いのに刺激が強すぎて…。
だけど抵抗ができない。
素直に受け入れてしまう私はどうかしてる…
「…っ、ん…!」
私の肩を抱いていた腕に力が入り
強く抱きしめられると
触れ合っていた程度の口唇が
深く重なって、私の思考をどんどん奪っていく。
ねぇねぇと呼びかけるように
彼のほっぺたを撫でる。
すると舌の動きを止めて
…唇も少し離してくれた。