第40章 クリスマス
折れ込んでいた肩掛けの裾を
するりと直してくれた。
「だって、」
「正月に、揃いにして出かけるんだよな?」
私はただ驚いて、ぽかんとしてしまう…
「…さすが」
「誰にでもわかるだろ。
相変わらず俺の事だいすきなのねー」
「うん。…これして初詣に行くの
楽しみにしてたんだ」
「そっか」
優しい微笑みを湛えた天元は
グッと背中を抱き寄せてくれて
私は再び彼に閉じ込められた。
「悪くねぇな、可愛い女とお揃い」
「可愛いって何。関係ないでしょ」
「だって俺可愛くねぇし。
なのに可愛いのとお揃いなんて不思議だろ?」
「全然。天元はかっこいいままだから。
ほら、我ながらすごくいい出来!
お兄さん、男前だねぇ」
ちょっとふざけて…茶化してみると
小さく吹き出した天元は
「なにを言ってんだ、
いつまで経っても無垢な姉さんよ」
ツンと、私のほっぺたをつっついてくる。
「無垢かなぁ?割と汚いこと考えるよ?」
「お前が?例えば何よ」
例えば…?
そう言われると
なかなか具体例が浮かばない…
「んー…そうだなぁ…」
本気出して頭を悩ませる私を見て
「…そんな考えねぇと出て来ねぇくらい
小せぇ事なんだろ?」
天元はやっぱり笑った。何だか悔しい!
「えぇ!あるよ、ある!
すっごく悪いこと!」
「悪いコトぉ?しかも『すっごく』だぁ?」
疑わしげに横目で見られて
私は更に躍起になった。
「あ‼︎わかった!
天元が私の事しか考えられないようにわざと…」
そこまで言ってハタと気づく。
手の内を明かしてしまったら
次からその手は使えなくなるのではないかと…
だけど瞳を捉えられて逸らせなくなった私は
もうこのまま言わされる予感しかしない。
「…わざと?」
ほら、どんな手を使っても言わせるつもり。
そんな目をしてる。
「…ないしょ」
「最近内緒が多いな…。でも今回は、
教えてもらうけど…?」
天元の妖しい笑みが迫って
私は既に、勝てる気がしなかった。
その場に優しく押し倒されて
「睦が話すまでやめねぇから…」
深く唇が重ねられる。
じゃあ絶対に話さないと考えた私を、
きっと彼は知らない…
私のどこが、無垢なんだか……
☆彡