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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第8章 続





「あらあら宇髄さん、来てくれたの」

にこにこ、いつもと変わらないこの人を見た所、
まだ事情は知らねぇようだ。

「すみません、お忙しい所。
睦はこちらに…?」

「ええ、ちょっと待って下さいね」

そう言うと、志乃さんは奥へと戻っていく。

…この人は、俺のこんな変わり果てた姿を見ても
何ともねぇんだなぁ…。
どうしたのか訊きもしねぇし、
全く変わらず接してくれる。
ありがてぇやら申し訳ねぇやら…複雑だ。

そんな事を考えていると、
志乃さんこそ複雑そうな顔をして戻って来た。

「宇髄さん、ごめんなさい。
何だか、
気分が悪いらしくて部屋から出られないの…
急にどうしたんだろうねぇ」

…そんな気はしていた。
そりゃそうか…。

「いえ、いいんです。
こちらにやっかいになっているなら
俺も安心ですから。
お大事にしてください。また寄らせてもらいます」

俺は頭を下げてその日は帰った。

ただ、次の日もその次の日も
睦は出てこなかった。
断る志乃さんの顔も、申し訳ない程沈んでいて、
橋渡しをさせて本当に悪い事をしてる気になった。
屋根を伝って部屋に行くことだって出来る。
でもそんな事、したらいけない気が、していた…。

俺はその日に限って、弁当屋の向かいの物陰に立ち、
入り口をじっと眺めていた。
睦に避けられている状態が、もう3日。
どう、打破するかを考えていた。
すると、きれいなかっこうをした睦が、
暖簾の向こうから、現れた。
……
俺は、アホみたいに、目を奪われた。
睦を、久しぶりに見るのに、
それがこんなにきれいな姿をしているとあっては
もうたまらない。

大きく深呼吸をすると、ゆっくり歩き出す睦。
負い目を感じている俺は声もかけられず、
その後をこっそり追いかけた。

人通りのない脇道に身を潜め、
睦が通りかかるのを待った。
顔を合わせて、何から話そうかを考えた。
そんなの、まとまるわけもねぇ。
でも、正直に今の状況を話さなくちゃなんねぇ…

せまい建物と建物の隙間を、
そいつが通りかかった瞬間、
腕を引き寄せて力一杯抱きしめた。
何が起きたのかわからず、慌てていたが、
俺、という事に気づいたのか、
少しだけ落ち着きを取り戻す。

あぁ…睦…。




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