第40章 クリスマス
相変わらず須磨に甘いな、睦。
「本当ですか?天元様」
疑り深いまきを。
睦の話を鵜呑みにしない。
「俺は別に。
睦が本当だって言うならそうなんだよ」
さすがのまきをも押し黙り、
睦はホッと肩を撫で下ろした。
「じゃああれひとつもらっても良いのか?」
話題を逸らすために
わざと分かりきった事を訊いてみる。
「はい!ぜひ、睦さんと
召し上がってくださいな」
すると雛鶴はそれがわかっていたのか
睦と俺ににっこりと笑った。
「ありがとうございます。嬉しいなー。
あんないいもの食べられるなんて
思っていませんでした」
「ふふ、よかった、喜んでもらえて」
雛鶴のおかげで
和やかな雰囲気のまま
この場を収める事ができたのだった。
さすが、
あれだけ行列ができるだけのことはあって…
…もしかしたら、
私が甘いものが好きなだけかもしれないけれど
「おいしーい!」
いただいたチョコレートを頬張った途端、
幸せでいっぱいに満たされた私の口内。
それは輪を広げたように全身へと染み渡り
「おいしいねぇ」
そう言わずにはいられなかった。
「よかったなぁ」
テーブルに肘枕をして
天元はチョコレートも食べていないのに
にこにこ幸せそうにしている。
「よかったなぁ、じゃなくて…
おいしいね、って一緒に言って」
チョコレートのカケラを
その唇に押し付けた。
「ん?んんーんん、んんんんんんんん」
頑なに唇を開かない天元。
口を閉じたまま喋る…けど、
何を言っているのやら…?
「なぁに?」
押し当てたチョコレートを一旦外すと、
にこっと笑って
「甘ぇのは睦だけでいい、
って言ったんだよ」
種明かしをする。
された所で私が照れるだけだ。
「なにそれ!またバカなこと言って…」
「嘘じゃねぇし」
私の髪を整えるように撫でつける天元に
「せっかくだから
一緒に楽しんでって言ってるのに!」
私は文句しか出てこない。